ベトナムにおけるISO認証市場ニーズ、普及状況

ベトナムにおけるISO認証市場のニーズは、様々な要因により拡大傾向にあります。主なニーズの背景は、経済成長と工業化の進展や輸出志向の強まり、法規制や市場要求などからです。
ベトナム政府は、経済の国際統合と産業競争力強化のため、標準化・認証制度の整備を国家戦略の柱と位置づけています。つまり、製品やサービスの基準を決めて、それを証明する仕組みを重要視しています。

その中心になっているのが、科学技術省という役所の下にある標準・計量・品質総局(STAMEQ)という機関です。ここでは、ベトナムの国としての基準(TCVN)を作ったり、国際的な基準(ISO/IEC)と合うように調整したりしています。
このような政府の考えがあるため、ISOの認証は、ただ品質を管理するための道具というだけでなく、海外への輸出を増やしたり、外国からの投資を呼び込んだり、法律やルールを守っていることを示したり、会社が社会の一員として責任を果たしていることをアピールしたりするための、とても重要な方法になっているのです。

ベトナム経済発展におけるISO規格の重要性

ISOの規格をベトナムが取り入れることは、経済の発展にとって色々な面でとても大切です。その理由を5つに分けて説明していきます。

貿易をよりスムーズにする

まず、ISOの基準を使うことで、ベトナム企業はグローバルな良いやり方で事業運営ができるようになります。すると、国際市場での競争力を高めることができます。特に、輸出においては、国際的な基準に適合していることが求められることが多いので、ISOの認証があると便利です。
STAMEQ(製品やサービスの基準作り、測り方の管理、品質管理を行う、科学技術省の下にある国の機関)は、世界貿易機関(WTO)のルールに基づいて、他の国からの問い合わせに対応する窓口にもなっています

外国からの投資を呼び込む

次に、外国の会社がベトナムに投資しやすくなります。ISOのような国際的な基準を守っていることは、外国の投資家や大きな会社がベトナムでビジネスを始めるかを考える時の良いポイントになります。
また、すでにベトナムに来ている外国の会社が、取引先の会社にもISOの認証を取るように勧めることもあるので、ベトナム全体でISOの考え方が広がるきっかけにもなります。

国内の市場を良くする

そして、ベトナム国内の市場も良くなります。ISOの規格は、ベトナムの会社が仕事のやり方を改善したり、製品やサービスの質を高めたり、お客さんの信頼を得たりするのに役立ちます。仕事のやり方が無駄なくなり、コストも下げられるので、ベトナム全体の産業の力や生産性が上がると考えられています。

国のルールを守りやすくする

国のルールを守る助けにもなります。ISO規格は、しばしば国内の技術規則や法的要件の基礎となったり、それらと整合したりするため、企業がコンプライアンス義務を果たす上で役立ちます。

環境や社会への取り組みを示す

最後に、環境を守ったり、社会に貢献したりする姿勢を示すことにもつながります。ISO 14001(環境に関する規格)やISO 45001(労働安全衛生に関する規格)のような規格は、会社が環境保護や職場の安全、もっと広い意味での社会的な責任に力を入れていることを具体的に示すことができます。これは、環境に関心のある消費者や投資家へのアピールになります。

これらの点を踏まえると、ISO規格はベトナム企業にとって、国内業務を国際的な期待に合わせ、グローバル経済と結びつけるための重要な「橋渡し役」として機能していることがわかります。

認証取得企業数、普及状況

認証取得企業数については、ISOが発行する「ISOサーベイ」が主要な情報源となりますが、報告の任意性や特定国(特に中国)のデータの影響により、年次比較や正確な数値把握には注意が必要です。ベトナム独自の公式統計データは限定的であり、市場規模の正確な定量化は困難です。

ISO Survey 2023 resultsによると、2023年時点での認証組織数は、ISO9001が5,638 、ISO14001が2,524、ISO/IEC27001が293でした。

しかし、定性的な分析からは、特にISO 14001とISO 27001の認証取得が今後も力強く伸長すると予測されます。
結論として、ベトナムにおけるISO認証市場は、政府の政策的後押しとグローバル経済への統合深化により、今後も拡大が見込まれます。各規格は異なる市場ニーズとドライバーによって動かされており、企業は自社の戦略的目的に合わせて認証取得を検討する必要があります。特に環境と情報セキュリティに関する規格は、持続可能な成長とデジタル経済における信頼性確保の観点から、その重要性を一層高めていくでしょう。

主なISO規格3種類の紹介

主なISO規格であるISO9001、ISO14001、ISO/IEC27001の詳細を説明します。

ISO9001(品質マネジメントシステム – QMS)


ISO 9001は、ベトナムにおいて最も基本的かつ広く認知されているISO規格の一つです。ISO 9001は、特に製造業や輸出関連企業にとって、国際市場への参入障壁を克服し、顧客信頼を獲得するための基盤的な認証として広く普及しています。
ISO 9001認証は、企業が品質に対してコミットしていることを示す客観的な証拠となります。
FDI企業からの要求やサプライチェーンへの参加条件としても機能しており、市場アクセスにおける「入場券」としての性格が強いです。顧客が期待する品質レベルを安定的に満たし、製品やサービスに対する信頼を築くことが、ビジネスの成功に直結します。需要が高い産業分野は多岐にわたりますが、特にベトナム経済を支える以下のセクターで重要視されています。

需要が高い産業分野
  1. 製造業
    ベトナムの主要輸出品目である電子機器、繊維・アパレルをはじめ、自動車部品、建設資材、食品加工、その他一般製造業など、広範な分野で品質管理体制の構築が求められます。
  2. 建設・エンジニアリング
    プロジェクトの品質向上と規制遵守のために採用されます。工業団地の開発・運営企業も認証を取得する例があります。
  3. サービス業
    ITサービス(しばしばISO 27001と連携)、物流、金融サービス、さらにはヘルスケアや教育などでも、サービス品質の保証と向上を目的として導入が進んでいます。

業務効率の改善も、企業がISO 9001認証取得を目指す理由の一つです。要求事項に沿ってプロセスを標準化・最適化することで、効率向上、無駄の削減、運営コストの低減が期待できます。

ISO14001(環境マネジメントシステム)


ISO 14001は、国内の環境規制強化と、国際的なサプライチェーンからの環境配慮要求という二重の圧力により需要が高まっています。ISO 14001認証は、企業が環境保護に積極的に取り組み、環境パフォーマンスの向上にコミットしていることを示す客観的な証拠となります。環境規制の遵守はもとより、環境リスクの低減、資源効率の向上、そして企業の社会的責任(CSR)を果たすことが、持続可能なビジネスの成功に繋がります。
ISO 9001取得企業が次に目指す認証としても位置づけられることが多いです。

需要高まっている産業分野
  1. 製造業
    環境への影響が大きいとされる電子機器、繊維・アパレル、化学製品、金属加工、紙・パルプ、食品加工など、幅広い製造業において、環境負荷低減と法規制遵守のための環境マネジメントシステム構築が求められます。
  2. 建設・エンジニアリング
    環境アセスメントの実施、廃棄物管理、汚染防止など、プロジェクトの環境側面管理と環境関連法規制の遵守のために採用されます。工業団地の開発・運営企業も、環境負荷低減と持続可能な開発を目指し認証を取得する例が増えています
  3. サービス業
    物流(グリーンロジスティクス)、廃棄物処理、エネルギー関連サービスなど、環境負荷低減に貢献する事業者はもちろん、ITサービスや金融サービスにおいても、事業活動における環境側面の管理と改善を目的として導入が進んでいます

環境パフォーマンスの向上とコスト削減も、企業がISO 14001認証取得を目指す重要な理由の一つです。環境目標を設定し、環境パフォーマンスを継続的に改善することで、エネルギーや資源の効率的な利用、廃棄物の削減、汚染の予防などが促進され、結果として運営コストの低減に繋がる可能性があります。

ISO/IEC27001(情報セキュリティマネジメントシステム)


ISO/IEC 27001(ISMS)は、ベトナムにおける急速なデジタルトランスフォーメーション、サイバー攻撃の脅威増大、データ保護規制の整備を背景に、需要が急拡大しています。特に情報技術(IT)サービス関連企業や、顧客や取引先の機密情報を扱う企業にとって、情報セキュリティ体制の強化と信頼性向上に不可欠な認証となっています。
ISO 27001認証は、企業が情報資産を適切に保護し、機密性、完全性、可用性を確保するために継続的な取り組みを行っていることを示す客観的な証拠となります。
グローバル化が進むビジネス環境において、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクは増大しており、ISO 27001認証は、国内外の顧客やビジネスパートナーからの信頼を獲得し、事業継続性を確保するための重要な要素となります。特に、FDI企業からの要求事項や、サプライチェーンにおける情報セキュリティ基準として採用されるケースが増加しており、市場アクセスにおける重要な要件となりつつあります。

需要が高い産業分野
  1. ITサービス業
    ソフトウェア開発、アウトソーシング、データセンター運営、クラウドサービス提供など、情報そのものを商品やサービスとして扱う企業にとって、顧客からの信頼を得るために不可欠です。しばしば、品質マネジメントシステムであるISO 9001と合わせて認証取得される傾向があります。
  2. 金融サービス業
    銀行、証券会社、保険会社など、顧客の重要な個人情報や金融情報を扱うため、高度な情報セキュリティ体制の構築が求められます。法規制遵守の観点からも重要視されています。
  3. 製造業(一部)
    知的財産、製品設計情報、顧客情報など、機密性の高い情報を扱う製造業においても、情報漏洩リスクへの対応としてISO 27001の導入が進んでいます。特に、グローバルなサプライチェーンに参画している企業では、取引先からの要求となる場合があります。
  4. その他サービス業
    物流、ヘルスケア、教育など、顧客の個人情報や機密情報を扱うサービス業においても、情報セキュリティ意識の高まりとともに、ISO 27001の導入に関心が高まっています。

情報セキュリティリスクの低減と事業継続性の向上は、企業がISO 27001認証取得を目指す主要な理由です。リスクアセスメントに基づいた適切な管理策を導入し、継続的に改善することで、情報漏洩やシステム障害などのリスクを最小限に抑え、事業の中断を防ぐことができます。また、情報セキュリティへの取り組みを示すことで、企業の信頼性と競争力を高める効果も期待できます。

まとめ

ISO規格は単なる内部管理ツールではなく、貿易、投資、そしてますます重要になる規制遵守や社会からの信頼獲得に不可欠な外部へのシグナル伝達メカニズムでもあります。したがって、ベトナムにおけるISO認証の価値提案は、単なる業務改善にとどまらず、グローバル化し規制が強化される環境下での市場アクセス、投資魅力度、ステークホルダーとの関係構築に深く関わっていると言えるでしょう。

企業情報およびサービス内容

企業名 3A CONSULTING COMPANY LIMITED
事業内容 ISO認証取得・運用代行サポート
代表者 LUONG THI THANH HUYEN
資本金 VND 300,404,000
電話番号 +84-857-904-239(ZALO・電話)(日本語・ベトナム語)
お問い合わせ
メールアドレス
yen@3a-c.com(イエン|(日本語・ベトナム語)
住所 9F, VIT Tower, 519 Kim Ma St., Ngoc Khanh Ward, Ba Dinh Dist., Ha Noi
ウェブサイト https://3ac.vn/

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