信金中央金庫がホーチミン駐在員事務所を開設 ー現地情報とネットワークを生かし、中小企業のベトナム展開を支援ー

信金中央金庫は、信用金庫の出資によって設立された協同組織の金融機関であり、全国254の信用金庫を会員とする「信用金庫のセントラルバンク」である。その信金中央金庫が、2026年にホーチミン駐在員事務所を開設した。信金中央金庫は、BIDVジャパンデスク(ハノイ)へ職員を派遣しており、ホーチミンとハノイの両拠点から信用金庫取引先を支援する体制を整えている。小笠原創一所長と岡崎氏に、開設の背景やベトナム市場の変化、現地拠点の役割を聞いた。

プロフィール
小笠原 創一氏
2005年入庫。国際金融情報センターやJETROホーチミン事務所への出向、信用金庫への出向(業界初の100%出資地域商社設立を担当)、海外業務推進部での勤務を経て、2026年よりホーチミン駐在員事務所長。ベトナム人の妻を持ち、私生活でもベトナムと深い縁を持つ。
岡﨑 翼氏
地方銀行勤務を経て2023年に信金中央金庫へ入庫。海外業務推進部にて海外拠点の運営管理や海外事業の企画に携わる。前職時代にもホーチミン市に駐在し、約10年ぶりに再赴任。
ベッター編集部
ベトナムには以前から多くの日系企業が進出しています。その中で、“今”駐在員事務所を開設した決め手は何だったのでしょうか。
小笠原氏
信用金庫のお取引先によるベトナム進出は、この10年で約2倍に増えています。我々が2年に1度実施している信用金庫お取引先の海外展開に関する調査でも、ベトナムは今後の進出先・調達先として高い関心を集め、販売先としても上位に挙げられています。人口規模や経済成長、政治的な安定性などを総合的に見ても、ベトナムはASEANの中で有力な進出先です。
また、日本で働く技能実習生や高度人材を通じて、ベトナム人材と関わる日本企業も増えています。日本で経験を積んだベトナム人材の帰国を機に、現地拠点の設立や事業展開を検討する例もあります。こうした中小企業の動向やニーズの高まりを受け、よりきめ細かな支援を行うため、現地拠点の開設に至りました。
ベッター編集部
ホーチミン市で仕事を始め、ベトナム市場にどのような変化を感じていますか。
岡﨑氏
ホーチミン市への駐在は今回が2回目で、約10年ぶりです。外資系企業の進出やデジタル化が進み、スマートフォンやSNSの活用、QR決済の普及からも変化の速さを感じます。物を作る場所だけでなく、消費市場としての魅力も高まっています。
ベッター編集部
企業から寄せられる相談内容にも変化はありますか。
岡﨑氏
以前は、現地法人の設立方法や投資制度など、進出するには何から始めればよいかという相談が中心でした。こうした進出に関する相談は現在も多く寄せられていますが、現在は、生産拠点や調達先の分散に関する相談に加え、ベトナムを販売市場として捉える企業も増えています。小売、飲食、サービス業からの相談のほか、進出済み企業からは、人材の採用・定着、管理体制、労務、サプライチェーンの見直しなど、事業運営に関する相談も増えています。また資金調達のご相談も少しずつ増えており、融資業務も行うシンガポール子会社とBIDVにお繋ぎしています。
ベッター編集部
ベトナム進出を検討する企業が、押さえるべき点を教えてください。
小笠原氏
ライセンスや会計、制度などについては、慎重な対応が必要です。現地で得た人脈や紹介は、大きな助けになりますが、対応漏れを防ぎ、正確な対応をするためにも、特定の人脈に頼ることなく、初期段階から金融機関や公的機関に相談し、委託する先を選定することが大切です。計画が固まる前に相談していただければ、必要な情報や相談先を早めに整理し、円滑な準備につなげられます。
岡﨑氏
日本製であることだけで受け入れられるという時代ではなくなっています。日本の商品やサービスは品質面で評価されていますが、その機能や価格が現地のニーズに合うとは限りません。ベトナム企業の成長に加え、中国や韓国など、他国企業の存在感も高まっています。価格や仕様を現地市場に合わせて見直し、変化するニーズに柔軟に対応することが求められます。
ベッター編集部
ベトナムで事業を成長させる企業には、どのような共通点がありますか。
岡﨑氏
短期的な成果だけを求めず、中長期的な視点で現地との関係を築く企業は、安定して成長している印象があります。ベトナムの文化や人材を理解し、現地人材に適切な権限を与えることも大切です。
小笠原氏
日本で行ってきた事業をそのまま展開し続けるのではなく、現地の変化やニーズを捉え、自社も変化していく姿勢が重要かと思います。日本の親会社では取り組んでいない事業を現地で開発し、成長させた企業もあります。
ベッター編集部
現地に拠点があることで、企業への支援はどのように変わりますか。
岡﨑氏
市場や制度の変化を迅速に把握し、日本からは見えにくい現場の実情や温度感を伝えられることが強みです。信用金庫お取引先や金融機関、関係機関との情報交換を通じて、WebやSNSだけでは得にくい生の情報やネットワークも蓄積し提供することができます。
小笠原氏
駐在員事務所では、情報提供に加え、企業ごとの課題に応じた支援も行っています。条件に合う現地企業の情報や、特定商品の市場での取扱状況を調査し、必要に応じて関係先へのヒアリングも実施します。信用金庫やグループ会社、関係機関と連携し、調査結果の提供や適切な相談先への橋渡しを行います。
ベッター編集部
今後、ホーチミン駐在員事務所をどのような拠点にしていきたいですか。
小笠原氏
まだベトナムに拠点を持たない企業には、必要な情報や相談先を案内するコンシェルジュのような存在を目指します。進出済み企業には、日系企業、ベトナム企業、関係機関等をつなぐ交流のハブになりたいと考えています。ホーチミン駐在員事務所だけでなく、ハノイに配置しているBIDVジャパンデスクの出向者とも連携し、ベトナム全体で信用金庫のお取引先をサポートできる体制を構築しています。
岡﨑氏
ベトナムは、今後も大きな可能性を持つ市場です。一方、法制度や商習慣、人材など、現地の実情を理解することが欠かせません。早い段階から情報を集め、中長期的な視点で事業を検討していただきたいと思います。私たちも現地の情報とネットワークを生かし、企業の良きパートナーとなれるよう努めます。

企業情報

信金中央金庫
・創立:1950年6月1日
・本店住所:東京都中央区八重洲1丁目3番7号
・業務内容:
個別金融機関として、預金業務、債券(金融債)業務、融資業務、市場運用業務、トレーディング業務、決済業務、信託業務等。信用金庫の中央金融機関として、信用金庫の各種業務の機能補完、信用金庫経営力強化制度等の業界独自のセーフティネット運営。

信金中央金庫 ホーチミン駐在員事務所

開設 2026年5月1日
住所 Unit 5, Level 9, Saigon Centre Tower 1, 65 Le Loi, Sai Gon Ward, HCMC
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