日本人ビジネスパーソンが抱えるベトナムビジネスの課題をテーマに、異業種のプロフェッショナルが対談を通じて、具体的な課題解決の糸口を探る「X-Biz Dialogue(クロスビズ・ダイアローグ)」
ベトナムでの事業継続のために企業が押さえなければいけないポイントはさまざまあります。労務・法務の整備やISO取得は、企業成長の土台。ベトナムでの組織づくりに不可欠な視点を掘り下げます。今回は「労務・法務」「ISO認証」「教育・組織づくり」に精通した企業3社のご担当者様に集まっていただき、ビジネス座談会を実施しました。
ベトナムにおける労務・法務の課題
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ベトナムに進出している日系企業の労務・法務の現状について教えてください。

企多くご相談を受けるのは次の3つです。
1つ目はコンプライアンス違反、特に製造業の日系企業からの相談が多く、購買担当者によるキックバックなどの不正行為が典型です。最近では貿易関連企業からも、社内不正調査や労務部門での不正に関する相談が増加しています。
2つ目は、解雇・人事に関する問題です。新卒や入社数年の従業員では問題が少ないのですが、長期在籍者になるとパワハラや人間関係のトラブルを起こしても新たな人材との入れ替えが難航することがあります。企業から適切な解雇や契約終了の方法について相談されるケースが多いです。
3つ目は知的財産・ノウハウ流出の問題です。日系企業では秘密保持契約や知財管理を重視しますが、ベトナムではその意識が未成熟です。企業で得たノウハウを個人の知識と誤解し、独立後に類似製品を製造・販売するケースもあります。このような秘密保持違反に関する相談は非常に多く寄せられています。
1つ目はコンプライアンス違反、特に製造業の日系企業からの相談が多く、購買担当者によるキックバックなどの不正行為が典型です。最近では貿易関連企業からも、社内不正調査や労務部門での不正に関する相談が増加しています。
2つ目は、解雇・人事に関する問題です。新卒や入社数年の従業員では問題が少ないのですが、長期在籍者になるとパワハラや人間関係のトラブルを起こしても新たな人材との入れ替えが難航することがあります。企業から適切な解雇や契約終了の方法について相談されるケースが多いです。
3つ目は知的財産・ノウハウ流出の問題です。日系企業では秘密保持契約や知財管理を重視しますが、ベトナムではその意識が未成熟です。企業で得たノウハウを個人の知識と誤解し、独立後に類似製品を製造・販売するケースもあります。このような秘密保持違反に関する相談は非常に多く寄せられています。

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労務・法務問題の背景と対策について、詳しくお聞かせください。

ベトナムでは、社員が「企業の利益を自分のもの」とする考え方を持ってしまい不正行為につながることがあります。また一般的なベトナム企業と日本企業との組織運営のギャップや価値観の違いによるトラブル事例も多く耳にします。
対策として、継続的な教育や意識づけ、社内コミュニケーションの強化が重要です。また、マネージャーが「日本と同じようにすべき」という考え方を持っているとトラブルの原因になります。ベトナムの文化を尊重しつつ、柔軟に適応する姿勢が求められます。マネージャーが責任ある姿勢を示し、会社が従業員を見守っているという意識を持たせることも、不正防止に有効です。
対策として、継続的な教育や意識づけ、社内コミュニケーションの強化が重要です。また、マネージャーが「日本と同じようにすべき」という考え方を持っているとトラブルの原因になります。ベトナムの文化を尊重しつつ、柔軟に適応する姿勢が求められます。マネージャーが責任ある姿勢を示し、会社が従業員を見守っているという意識を持たせることも、不正防止に有効です。

ベトナム進出企業では、投資登録証明書(IRC)の更新時期を迎えている企業がたくさんあり、製造業を中心に更新手続きが難しいという話を聞きます。IRC更新のポイントを教えてください。

ベトナムでの会社設立は、投資登録証明書(IRC)の取得から始まりますが、その有効期間は短く、定期的な更新が必要です。更新時には、事業内容の適正性や経済合理性が重視され、環境規制の影響を受ける企業は継続性が疑問視されることもあります。
また、法律の解釈基準が不明確で、当局の対応も一律でないため、手続きに苦労する企業も多いです。こうした中で、法律の根拠に基づき正当に主張し、必要な議論を行う姿勢が重要です。それが制度全体の改善にもつながります。
また、法律の解釈基準が不明確で、当局の対応も一律でないため、手続きに苦労する企業も多いです。こうした中で、法律の根拠に基づき正当に主張し、必要な議論を行う姿勢が重要です。それが制度全体の改善にもつながります。

ベトナムにおける「ISO認証」について
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ベトナムにおけるISO認証の現状について教えてください。

ベトナムではISO認証取得が年々増加しており、日系企業だけでなくローカル企業にも広がっています。特に製造拠点ではISO9001が主流で、IT分野ではISO27001(ISMS)、環境規制強化に伴いISO14001の取得も増えています。企業はこれらを法令遵守やライセンス取得の支援と捉え、環境に配慮した経営を進めています。
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「ISO認証」取得が進む背景には何があるのでしょうか?

ベトナム企業は日本・欧米との取引を視野に入れており、取引先から取得必須とされることも多いため取得を目指す企業が増えています。たとえばISO27001は、日本で2015年頃から拡大しましたがベトナムでも同様の流れがあり、取得が取引条件となる事例が増えています。期限付きの要請や取引拒否もあるため早期準備が必要です。

取得までにはどの程度の期間がかかるのでしょうか?

弊社がサポートしているケースだとスムーズに進んで半年〜8か月ほど、長いと1年ほどかかります。


厳格化される法制度に対応する意味合いでもISO取得はメリットがあるように思いますか?

はい、ISOの要求事項の中には法規制を遵守しているか確認する項目もあります。たとえば弊社では、データ保護法に対応した運用の提案を行うこともあります。

ISOは取得後の運用・更新が大変だと思いますが?

おっしゃる通りです。ISO取得によって、業務の革新やプロセスの見える化、不正防止のための仕組み作りが本来の目的です。そのため弊社では、ISO認証をゼロから支援し、運用の定着支援や毎年の定期審査を行い、他社事例も交えて改善提案をしています。取引のために最低限取得したい企業から、社内に根付かせたい企業まで多様な支援を提供しています。
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「ISO認証」取得の課題について教えてください。

ベトナムではインフラ面の制約や考え方の違いによるトラブルも起こります。私たちが間に入って調整や代替案を提示することも多いです。


ISO認証の成功パターン・失敗パターンを教えていただきたいです。

目に見える成功事例はまだ多くありません。日本と同じやり方では通用しないことが明確になり、どうローカライズするか、落とし所を見つけるかという段階にあります。
失敗例としては、日本で取得したISO規定をそのままベトナム語に翻訳して適用したケースや、規定通り教えたはずが現場で独自の運用がされていた例があります。
失敗例としては、日本で取得したISO規定をそのままベトナム語に翻訳して適用したケースや、規定通り教えたはずが現場で独自の運用がされていた例があります。
日本人赴任者の教育と現地スタッフの育成
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日本人赴任者の教育について、現状と課題をお聞かせください。

ベトナム赴任では、部長以上の方が3〜5年の任期で赴任・帰任するのが一般的ですが、担当者レベルの方がいきなり20〜30人をマネジメントするケースもあります。赴任前にマネジメント教育の機会が少ないこと、文化や言語が違う環境で悩む方も多く、メンタル不調に陥る場合もあります。

現地で学べという風潮や、赴任そのものをトレーニングの一環と捉える考え方も依然として根強いですよね。

そうなんです。準備不足による負担は大きいです。
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現地スタッフの教育については、どのようにお考えでしょうか。

コロナ以降、日本人管理職の赴任は減っており、ベトナム人のリーダー育成が重視されています。現地の人材が組織を牽引できるようになる教育体制が求められています。日本とベトナムで文化の違いはありますが人材の活かし方の本質は同じです。「成果を上げる」「お客様を大切にする」など根本的な考え方は共通しています。
組織文化と従業員の考え方を変える重要性
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組織文化がコンプライアンスや業績に大きく影響すると考えます。組織文化と従業員の考え方を変える重要性についてお聞かせください。

組織文化がコンプライアンスや業績に大きく影響します。私たちは60年以上、組織文化を研究し、成功体験を通じて考え方を変えることの重要性を伝えてきました。組織変革においては「人」と「価値観」に焦点を当て、それぞれを可視化しながら変革を進めます。
個々の性格は変えられませんが考え方は変えられます。考え方は後天的に形成され、変えるためには新たな成功体験が必要です。だからこそ、現場での成功体験を積ませる支援を重視します。

具体的にどういった支援を行っているのでしょうか?

研修は限られているため現場での実践と伴走が不可欠です。たとえば、上司と部下で1on1を実施し、行動変容を促したうえで研修を重ねるなど、成長のサイクルを作っています。

マネジメント・組織づくりの本質
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マネジメントや組織づくりの本質とは何でしょうか。

未経験者でも立場が変われば必ずマネジメントを求められます。その際に性格は問題でなく、リーダーシップを発揮する考え方を持てるか、また、それを学び実践することができるかどうかが重要です。
マネジメントそのものだけでなく、現地特有の文化や法制度への対応、また人材育成に関する知見が不足していることに悩み、私たちに相談してこられる方は多いです。不足している知見を積極的に得る姿勢は重要ですし、外部ネットワークとのつながりが不可欠になります。
組織づくりにおいては、目的を明確にすることが重要だと考えています。「業績を上げるため」と言われても従業員は納得しません。 だからこそ私たちは、社長と一緒に5年後・10年後のビジョンを描き、どんな未来を目指すかを明確にします。それに共感したメンバーが自発的に動くようになる、夢やビジョンに基づく組織づくりを重視しているんです。やらされている感覚では面白くないし長続きもしません。「夢」や「ビジョン」のようなものがないと、従業員のモチベーションも上がりません。
「世の中を良くしたい」、「この地で有名な企業になる」など、長期的な夢やビジョンを意識して経営の軸を作れるかどうかが、会社としての充実度につながるはずです。
マネジメントそのものだけでなく、現地特有の文化や法制度への対応、また人材育成に関する知見が不足していることに悩み、私たちに相談してこられる方は多いです。不足している知見を積極的に得る姿勢は重要ですし、外部ネットワークとのつながりが不可欠になります。
組織づくりにおいては、目的を明確にすることが重要だと考えています。「業績を上げるため」と言われても従業員は納得しません。 だからこそ私たちは、社長と一緒に5年後・10年後のビジョンを描き、どんな未来を目指すかを明確にします。それに共感したメンバーが自発的に動くようになる、夢やビジョンに基づく組織づくりを重視しているんです。やらされている感覚では面白くないし長続きもしません。「夢」や「ビジョン」のようなものがないと、従業員のモチベーションも上がりません。
「世の中を良くしたい」、「この地で有名な企業になる」など、長期的な夢やビジョンを意識して経営の軸を作れるかどうかが、会社としての充実度につながるはずです。

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ベトナムの労務・法務、ISO認証、教育と組織づくりについて、各分野に精通する企業様のご知見をいただける貴重な会でした。課題解決を狙う企業様に役立つ会になりましたら幸いです。
各社の基本情報

アサガオ法律事務所
ベトナム法に関するリーガルサービスを提供。スキー投資ム構築、各種許取得、企業法務顧問、契約書作成・レビュー、M&A、コンプライアンス支援、労務法務、知的財産、紛争解決など幅広く対応。
担当者 | 代表弁護士 ブイ・ホン・ズオン |
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問い合わせ先 | Duongbui@betoho.vn |
Website | https://betoho.vn/ |
JECC Vietnam Company Limited(ジェックVN)
組織変革と人材育成のコンサルティングを行っています。日系企業様を中心に10年以上の実績があります。具体的には、ベトナム人向けには現場の方々から経営幹部育成や組織づくり、日本人向けにはビジョンづくりや経営課題解決支援を実施しております。
担当者名 | 松山 大輔(代表取締役) |
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問い合わせ先 | Nguyen Thi Hoa Mua (ムア) oamua_nguyen@jecc-net.com.vn 090-220-7685 024 2283 4888 ※日本語&ベトナム語対応可能 |
Website | https://jecc-net.com.vn/ |
3A CONSULTING COMPANY LIMITED
第三者認証であるISO9001、ISO14001、ISO/IEC27001(ISMS)の取得・運用・更新を支援するコンサルティングを提供しています。プロによるサポートでスムーズな運用へ。
担当者名 | 保住 尭(ベトナム事業部長)|お客様サポート担当 イエン |
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問い合わせ先 | yen@3a-c.com(担当:イエン|日本語・ベトナム語対応可) |
Website | https://3ac.vn/ |