モノの移動を担う物流はあらゆるビジネスにとっての大動脈、特に製造業にとっては非常に大事なポイントとなります。ベトナム国内の物流との対日本輸出入に関して必要な事項を解説します。
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- 1 ベトナムの地理的特徴と物流
- 2 質の高い物流のニーズに応えてきた日系企業
- 3 輸出入業務に必要な国際物流の専門業者
- 4 ベトナムから海外への輸出(海運)フロー
- 5 日本とベトナム間での輸出入優遇措置
- 6 輸出入申告に必須「HSコード」について
- 7 日本からベトナムへの輸出(海運)フロー
- 8 「VNACCS」を通じて行うベトナムの輸出入申告
- 9 ベトナムの規制、とくに厳しい中古品の輸入
- 10 輸出加工企業(EPE)への優遇措置
- 11 プラクティカル・ノーム(標準消費量)とは
- 12 「On The Spot取引(みなし輸出入通関制度)」とは
- 13 「保税倉庫」のメリット
- 14 保税倉庫の利用手続きフロー
- 15 ベトナム北部が国際物流の拠点になる未来図
ベトナムの地理的特徴と物流
ベトナムの国土は南北に長く、南シナ海に面して北は首都ハノイ、南は商業都市ホーチミン市、また近年では中部に位置するダナンの発展も目覚ましいものがあります。
昨今のベトナムでニーズが高まっているのは南北間の物流サービスであり、端的にいえば、北のハノイと南のホーチミン市を結ぶ定期便ですが、主に4つの方法があります。
・飛行機:空路での輸送法です。即日輸送も可能で最も短時間ですが、コストもかかるため現状では電子部品や半導体等の輸送がメインとなります。
・トラック:陸路で道路を使って運びます。空路の次に早く、最速で2日。またコストも飛行機の次にかかります。
・貨物車:陸路で鉄道を使った輸送法です。トラックよりも時間はかかりますが、その分コストはかかりません。
・内航船:ベトナムの南北を流れる河川を使った輸送です。5日程度と最も時間がかかりますが、費用はトラックの約半分で一番安価です。
それ以外に、ベトナムの物流インフラとして特徴的なものにバイク便がありますが、これは主に都市部の短中距離が専門です。
質の高い物流のニーズに応えてきた日系企業
90年代以降、外資系企業の相次ぐベトナム進出に従って、より質の高い物流が求められるようになりました。
日系の物流企業もそれに伴い、駐在員事務所を構えましたが、外資規制があり現地法人化できたのは90年代後半です。
そのなかで、求められたのは単にものを運ぶのではなく、外資ならではのテクノロジーを組み合わせた物流であり、日系企業の各社はそれぞれの強みを生かした取り組みを行なってきました。
特に温度管理の必要な食品や薬品、技術系素材などの輸送量は月ベースで増加を続けているなかで、温度管理の必要な倉庫業務と物流を組み合わせた輸送に強みのある物流業者もあります。
輸出入業務に必要な国際物流の専門業者
国際物流ビジネスには、難しい手続きや国ごとに異なる運送方法や関税、法規制などの情報や経験が必要です。
そのすべてを自社で対応していくのには大きなコストがかかるため、それらを代行してくれる物流の専門業者に依頼することが望ましいと言えるでしょう。
それが「フォワーダー」と呼ばれる事業者であり、荷主に代わって貨物の輸送に伴うさまざまな業務を依頼することが可能です。
フォワーダーの基本的な役割は、荷主と実運送人の間で、国際輸送に関する業務を行うことですが、輸送業者がそれらの業務を行うケースもあります。
また、国際輸送にはたくさんの手法があるように、フォワーダーにもそれぞれ違いと得意分野があるので、どの分野に強みがあるフォーワーダーに依頼をするのがいいか、まずは相談し、検討しましょう。
ベトナムから海外への輸出(海運)フロー

STEP 1:書類を準備する
輸出通関に必要な書類は主に下記のようなものですが、物品によって必要な書類も変わります。これらには原本が必要なものとコピーで可能な書類があります。
また、この時点で輸入通関に必要な書類も用意されていなければなりません。輸出よりも輸入の規制の方が厳しいため、特に輸入地側での必要書類・手順を必ず事前に確認し、準備しましょう。
・輸出申告書 :定められたフォーマットによって記入。
・インボイス :輸出者が輸入者に対して発行する請求書。
・パッキングリスト:梱包詳細品。内容物の品名、数量などの必要な情報を記載。
・シッピングインストラクション:船積依頼書。輸出者が物流業者について依頼した内容が記載された書類。
・委託契約書 :輸出者が通関業務を委託したことを証明する書類。
・その他:必要に応じて輸入許可証、検査証明書、評価申告書、原産地証明書など。
STEP 2:出荷日を決める
委託する物流業者と打ち合わせ、日本への搬入スケジュールから逆算する、工場の生産スケジュールから起算するなどして、ベトナムから出荷する日と便を決め、船を予約します。
STEP 3:輸出通関手続き
VNACCSという税関システムにて輸出通関申告を行います。通関の手続きが終わったらコンテナを港に運びます。ここから先は輸送機関のオペレーションに委ねられることになります。
日本とベトナム間での輸出入優遇措置
日本とベトナム間での輸出入を行うとき、両国間には「日本・ベトナム経済連携協定(JVEPA)」があります。
経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)とは、特定の国や地域同士での貿易を促進するために、輸出入にかかる関税の撤廃・削減などについて定めた内容になっています。
EPAによって撤廃または削減された特恵関税(EPA税率)を適用して貨物を輸出入しようとする場合は、定められたEPA原産地規則によって手続きを行う必要があります。したがって、この制度を使うときには必ず「原産地証明書(CO)」を取得しなければなりません。
同時に日本にはASEAN域内を対象とした「日ASEAN包括的経済連携協定(AJ)」もありますから、この両方の制度を使うことでより選択肢の広い関税の優遇措置を受けることができます。
その他にも、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)や地域的な包括的経済連携(RCEP)協定といった選択肢もあります。
輸出入申告に必須「HSコード」について
「HSコード」とは貿易上、材質と形状と用途を基礎としてその物品が何であるのかを世界各国で共通して理解できるよう取り決めた番号のことです。あらゆる物品がHSコードによって分類されており、輸出通関、輸入通関の申告に欠かせません。
日本では「輸出入統計品目番号」、「関税番号」、「税番」、「HS番号」といった呼び名が使われることもあります。
原産地証明書を使って課税減免税の優遇措置を受けるときには、特に重要な事項となります。

日本からベトナムへの輸出(海運)フロー
STEP 1:書類を準備する
輸入通関に必要な書類は主に下記のようなものですが、物品によって必要な書類も変わります。これらには原本が必要なものとコピーで可能な書類があり、2部必要な書類もあるので必ず事前に確認し、準備しましょう。
・輸入申告書:定められたフォーマットによって記入。
・インボイス:輸出者が輸入者に対して発行する請求書。
・パッキングリスト:梱包詳細品。内容物の品名、数量などの必要な情報を記載。
・船荷証券(B/L):船会社が輸出者の貨物を受け取ったときに発行される書類。
・委託契約書 :輸入者が通関業務を委託したことを証明する書類。
・その他、必要に応じて、輸出許可証、検査証明書、評価申告書、原産地証明書など。
STEP 2:日本から出港する
日本の規定に従って輸出通関の手続きをし、貨物を船に載せてベトナムに向けて出港します。その間、ベトナムでは入港するまでの間に輸入申告書を作成し、必要な書類とともに税関に提出します。
STEP 3:税関検査を受ける(必要時)
該当となった際は税関検査を受けます。税関検査が必要な場合は税関の指定する検査場で行われることが一般的となります。必要がなければそのまま国内への搬入、運搬が可能です。検査や手続きが終わった貨物は国内物流のルートによって運搬できます。
「VNACCS」を通じて行うベトナムの輸出入申告
日本の通関システムである「NACCS(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System)」では、税関その他関係行政機関に対する手続および関連する民間業務を一元的に処理しています。
ベトナムにはこれをベースにした「VNACCS(Vietnam Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System)」というシステムがあり、その形式に従って申告をする必要があります。
市場解放後に急増および高度化したベトナムの国際物流に対応するために日本の国際協力のもと「VNACCS」が導入されたことで、税関行政の近代化が推進されました。
これにより、税関分野における既存の法規制や業務プロセスの見直しなどの体制作りが推進され、投資・ビジネス環境が整備されました。
ベトナムでは「VNACCS」に基づいて輸出入申告が進められますが、日本との違いとして、輸入申告の際には専用のUSBトークン(※)が格納されたデバイスが必要である点があげられます。
※USBトークン:主にセキュリティーを目的としたデバイスで、USBメモリの形状を持ちながら、内部にICチップを搭載しています。このデバイスは、個人識別情報(PIN番号)と組み合わせて使用され、デジタル鍵として機能します。
ベトナムの規制、とくに厳しい中古品の輸入
貿易管理に関わるベトナムの管轄官庁は基本的に商工省となりますが、他の省の管理対象になる物品もあるため、その都度最新のリストを確認し、必要な手続きをとることが必要です。
国際法や条約によって輸出入が禁止されている物品はもちろんのこと、ベトナムの法によって国内への持ち込みが禁止されている物品もあります。
それ以外にも、持ち込みは可能でも税関で検査が必要だったり、証明書の提出が必要だったり、特別な関税が定められていたり、それに対する免除規定があるなどさまざまなケースがあります。
特に注意が必要なのは中古機械ですが、基本的に製造から10年以内であれば輸入が可能です。ただしそのケースでも、日本で第三者検定機関による検査を受けて証明書を提出することが必要となります。
検査についてはフォーワーダーに相談することはできても、検査自体は機械の所有者である輸出者が行います。
提出する書類の不備などは、たとえ一文字違っただけでも税関では大きなトラブルの原因となるため、細心の注意が必要です。
輸出加工企業(EPE)への優遇措置
製造業としてベトナムに進出しようとする企業は、「輸出加工企業(EPE:Export Processing Enterprises)」のライセンスを取得するかどうかという判断がとても重要になります。
EPEは「輸出加工区内で設立され、操業している企業」または「工業団地内または経済区内で操業し、製品すべてを輸出する企業」を指し、海外から材料をベトナムに輸入し、工場内で製品化してまた海外に販売するというビジネスモデルが典型的です。

EPEは税法上、外国企業とみなされるため、EPE施設とベトナム領土内との物品の移動にも通関手続きが必要です。
また、EPEが次に該当する物品を輸出入する場合で、保税工場の扱いを受けられれば、輸出入関税およびVATが免除されるなどのメリットがあります。
ベトナム政府は従来、EPEに対して法人税や付加価値税の優遇措置を行っていましたが、2016年以降ハイテク分野や僻地への投資など一部を除き20%の課税が設定されています。
プラクティカル・ノーム(標準消費量)とは
「プラクティカル・ノーム」とは、輸出用の製品を加工または製造するために使用される原材料および消耗品の量を意味します。
輸出製造・加工を行う企業、とりわけ関税に対して優遇措置のあるEPEには、輸入原料、加工および完成品販売に関する在庫管理情報を管轄税関に報告する義務があります。
原材料が製品になるまでの工程を正確にトラッキングし、消費量と余剰分に誤差が出ないようにし、定められたフォーマットに基づいて「ノームシート」を作成し、提出しなければなりません。
プラクティカル・ノームに関するデータと文書には保管の義務があり、この消費量は製品の使用目的の変更・国内消費への移転、通関後の税額決定の際に使用されます。
年に一回監査が入りますが、万が一報告されたノームシートの内容と在庫の原材料に差があれば、追徴課税を支払うことになります。
「On The Spot取引(みなし輸出入通関制度)」とは
「On The Spot取引(みなし輸出入通関制度)」とは、EPEや非関税地域に属する企業との取引やベトナム国内取引の間に海外企業が入る取引のうち、輸送が同国内で完結するものに適用される通関制度です。具体的には下記のような取引の場合がみなし輸出入可能な対象となります(政令 08/2015/ND-CP第35項)。
1. 海外企業がベトナム企業Aに加工を依頼し、他のベトナム企業・個人Bに販売・納品する取引
2. ベトナム企業とEPEの間での売買取引
3. ベトナム企業からベトナムに拠点を有しない海外企業に販売後、別のベトナム企業に納品される取引
この制度により、輸出入手続を実施するもののベトナム国内での輸送で完結させることが可能となります。
メリットとしては国際取引の煩雑さを軽減し、国外への輸送不要となり、輸送コストの削減や短納期での物流が実現できることです。
ただし、2022年末頃からOn The Spotの定義が議論され、2023年に財務省は政府に対しOn The Spot取引廃止の提案をしております。議論が開始された2022年以降、特に拠点を有しない海外企業が介在するみなし輸出入取引を行う場合は「保税倉庫」を経由して対応する事例が急増しております。
「保税倉庫」のメリット
「保税倉庫」とは、外国から届いた貨物の関税が一時的に留保された状態で保管できる倉庫です。税金が課されないまま保管できる保税倉庫を利用することで、次のようなメリットが生じます。

・ベトナムに所在する納入先の近くで在庫を持てることにより配送リードタイムの短縮が可能になります。
・保税倉庫は税関の管轄のもと、法の規制によって高度なセキュリティーのもと貨物を安全に保管することができます。
・保税倉庫に保管された貨物は、輸入通関手続きが終わるまで関税や消費税が発生しないので支払いを回避・留保することができます万が一、不良品や法改正により商品が輸入できなくなったとしても、税金を支払わずに海外へ返送することが可能です。
保税倉庫の利用手続きフロー
入庫のフローは下記の通り
[国外からの入庫]
1. 入庫前の準備
– お客様: B/L、インボイス、パッキングリストなどの準備、提供
– 業者: 頂戴した書類を基に保税倉庫契約書など書類の作成
2. 保税倉庫向けの輸入通関の実施
3. 輸入通関完了後に港・空港から貨物をピックアップし保税倉庫まで輸送
4. 保税倉庫到着後、積み下ろしを実施し、入庫完了
[国内からの入庫]
1. 入庫前の準備
– お客様: ベトナム国内企業作成の輸出用のインボイス、パッキングリストの提供
– 業者: 頂戴した書類を基に保税倉庫契約書の作成
2. ベトナム国内企業側で輸出通関を実施
3. 輸出通関完了後、保税倉庫まで輸送
4. 保税倉庫側で輸送貨物の通関関連書類を基に入庫許可手続を実施
5. 入庫許可後、積み下ろしを実施し、入庫完了
出庫のフローは下記の通り
国内外へ出庫可能です。ただし、流れが少し異なりますのでそれぞれの概要をご紹介します。
[国外へ出荷]
1. 出庫前の準備
– お客様:輸出書類(インボイス、パッキングリストなど)準備
– 業者: 頂戴した書類を基にブッキングの手配、D/O(出荷指示)の発行、輸出手続の実施
2. 輸出通関の実施
3. 輸出通関手続が完了したら貨物を積込、出庫完了、港・空港に輸送し目的地に向けて出港
[国内へ出荷]
1. 出庫前の準備
– お客様:ベトナム国内側での輸入通関書類(インボイス、パッキングリストなど)の準備・提供
– 業者: 頂戴した書類を基にD/O(出荷指示)の発行、輸入者への送付
2. ベトナム国内企業が輸入通関を実施
3. 輸入通関完了後、通関関連書類を基に出庫許可手続を実施
4. 保税倉庫側輸送貨物の通関関連書類を基に出庫許可手続を実施
出庫許可後、貨物の積込を実施し、出庫完了、輸入者に納品
ベトナム北部が国際物流の拠点になる未来図
陸路の物流では、国土の南北に高速道路が通ることで今まで40時間だった移動時間が10時間に短縮されると言われています。
また、中国とベトナムは鉄道がつながっているため、タイやカンボジアも含め、将来的にこの地域のビジネスに大きな影響を与えると考えられています。
現在はまだ電力不足も懸念されるベトナムの北部地域ですが、そうした将来的な青写真も含めて物流の需要も伸びていることは間違いありません。
現状では経済的にはホーチミン市を中心とした南部に注目が集まっていますが、新たなビジネス開拓のチャンスもあるのが北部であると見てよいでしょう。
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