ベトナムの労働法は、日本と同様で、被雇用者を有利的に保護し、従業員を簡単に解雇することができません。被雇用者を解雇するために、?解雇する理由(法の規定に従う)と?手続の実施が必要です。
また、不正解雇を行うと、被雇用者から訴えられるリスクが十分に高いです。被雇用者が解雇された後、すぐに起訴するのではなく、数か月後又は数年後に雇用者を訴える場合においては、雇用者(会社)の主張を認めないと、多額の損害賠償金を支払うように命令されるケースが少なくありません。
こういった複雑な手続又は大きなリスクを避けるために、話し合いによる合意のもと、契約を終了させる方法を推薦します。
ベトナム労働法に基づき、被雇用者を解雇することは、大変難しいと聞いています。その解雇に当たり、どのような条件を満たす必要があるのかをお教えいただきますでしょうか。
被雇用者を解雇するためには、まず解雇する理由が必要です。解雇の理由は、非常に限られており、ベトナム労働法に定める以外の理由は認められません。同法の126条で定めるのは、労働者の窃盗、汚職、賭博、故意に行う暴行・傷害行為、職場での麻薬の使用、営業秘密等の漏洩、知的財産権の侵害行為など使用者の資産、利益に重大な損害をもたらす行為などの刑事関連法規に触れる場合や、昇給の停止、降格措置を受けている間に再び懲戒処分対象行為を行った場合、労働者が無断欠勤を月に5日又は年20日行った場合とされています。
また、解雇するためには、十分に手続を行う必要があります。解雇手続においては、雇用者側に被雇用者の解雇事由の立証責任があり、また、解雇に先立ち、事業所における労働団体の代表部及び労働者の代理人を含めた審議会を開催しなければなりません。この審議会を開くためには、労働者より労働団体の代表部や代理人等に対して通知を行う必要があり、また審議においては議事録の作成及び参加者の署名が必要となります。
結構ハードルが高いですね。そういった厳しい規制を乗り越えるために、弁護士の力で何かの対策がありますか。
まず、現状から言えば、ある従業員を解雇したいという状況になった場合において、一般的に雇用者とその被雇用者との話し合いの場が設けられることがほとんどありません。そこで仮に話し合いができても、論理的に話すというよりも感情的になってしまう方が多いです。そのような状況の中で、雇用者の立場として
ただし、先ほど話した通りに、解雇する理由と手続の実施を十分に対応しなければ、不正解雇になってしまいます。こうした状況を解決するために、弁護士のような第三者の専門家が同席し、調整することは、非常に効果的です。弁護士が同席したほとんどのケースにおいて、被雇用者から契約終了の合意を得ることができています。
それは、何かの理由がありますでしょうか。
色々ありますが、主な理由としては、以下のものを取り上げられると思います。
- ベトナム人の被雇用者は、雇用者の前では嘘をつく傾向にありますが、第三者である弁護士に対しては嘘をつくのが苦手です。
- ベトナム人の被雇用者は、雇用者とは多かれ少なかれ、お互いのことをある程度知っていますが、どれだけ長い勤務経験があったとしても、知らない弁護士に対しては畏怖や警戒心があり、自分のことを弁護士に共有したくないという心理から、弁護士の言うことには基本的に従います。
- 雇用者よりも専門家である弁護士の方が、立論方法や話し方、証拠の提示などの整理が理論的で、説得力が高いです。
- ベトナム人の被雇用者は、雇用者に対しては根拠なく無理な要求などをいい加減にする傾向にありますが、専門家である弁護士と交渉する(若しくは要求する)自信はあまりありません。
大変参考になりました。ありがとうございます。
ベトナム明倫国際法律事務所
今回の執筆者
ホーチミン事務所代表弁護士
盛 一也(もり かずや)
k-mori@meilin-law.jp
・京都大学総合人間学部 卒業、中央大学法科大学院 卒業、2015年12月弁護士登録、2016年1月税理士法人山田&パートナーズ入所、2018年11月弁護士法人Y&P法律事務所転籍、2020年1月明倫国際法律事務所入所。座右の銘は、兵は神速を尊ぶであり、常に迅速な役務提供を実践。専門分野は、国際関係取引/スタートアップ法務/各種契約書・規定整備/人事労務対応/商標等知的財産戦略。使用言語は、日本語、英語。趣味は筋トレとサウナ。
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