映画への目覚め、憧れのハリウッド
ベトナムと日本の架け橋として活躍する日本人やベトナム人の奮闘を語ってもらう取材企画「熱狂半島」。今回は12月28日から公開され大ヒットとなったベトナム映画『パパとムスメの7日間』で監督を務めた落合賢氏をインタビュー。2016年に『サイゴン・ボディガード』でベトナム映画初の日本人監督として注目を浴び、ベトナム国内で大ヒット。今作は二度目のベトナム映画監督作品となります。原作は日本の小説で、父と娘の身体が入れ替わる内容の軽快コメディー。日本のTVドラマでも大ヒットした作品をベトナム映画版としてリメイク。今回はベトナム映画と深い関わりを持つことになった落合監督ご自身の気になるプロフィールや今作に関することをお伺いしました。
こちらは落合監督のベトナム二作目となり『パパと娘の7日間』の予告編
中学1年の初めて映画監督を務めたほろ苦い思い出
3人の泥棒が銀行強盗に失敗した後、学校に立て籠もり、人質を盾に身代金を要求する。そこで7人の生徒が立ち上がり強盗をやっつけて人質を救出するストーリーです。
ぼくも上手くいかないことにいら立ち「やる気がないのならオレは帰る」って帰ろうとしたんです。もともと涙もろいのですが、校門の前で涙が溢れてきました。すると追っかけるように学級委員長がやって来てぼくを止めてくれたんです。「落合、さっきの態度はお前が悪い。一緒に謝ってあげるから戻って来い」って言われました。
夏休み中の撮影でクラスメイトは休日返上で参加してくれているのに、ぼくには彼らに対する感謝が足りませんでした。そんな学級委員長の忠告にハッと気づき、確かにその通りだと思ったんです。しかし、一方で学級委員長に指摘されたことが悔しくて、また涙が出てきて……(笑)最終的に映画は完成しましたが、このことがきっかけで映画はみんなで作るものということを強く意識するようになりました。
憧れのハリウッド。本場アメリカの映画大学へ
劇場サウンドシステム、THXを作った人で『スターウォーズ』にも関わった人です。内容は『スターウォーズ』の冒頭の宇宙船が登場する映像を見させられました。始まりの映像は無音。教授は「宇宙は無音、これが本当の宇宙なんだ」と言いました。そこから様々な音が重なるのですが、宇宙船の音やサウンド、音のレイヤーをひとつずつ教えてくれ、映画での音の使い方を学びました。
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落合 賢(おちあい けん) 1983年5月31日生 東京都出身。高校卒業後に渡米し、南カリフォルニア大学の映画製作学科に入学。大学卒業後はアメリカ映画協会付属大学院の映画監督科に進学。『ハーフケニス』という短編映画で全米監督協会(DGA)からアジア系アメリカ人学生部門審査員特別賞を受賞。2011年、梶原一騎原作のアニメ『タイガーマスク』の実写版を監督。2014年、斬られ役として知られる福本清三を主演にした『太秦ライムライト』が公開され、国外からも高い評価を得た。 2015年、海外マーケット向けに制作された「NINJA THE MONSTER」が、京都府京都文化博物館で公開された。2016年、ベトナム映画初の日本人監督として『サイゴンボディガード』を指揮しベトナム国内で大ヒットとなる。