本記事は、ベトナムやベトナム人に起こる出来事を多彩に切り取り、解説するコーナーです。
ファム・ミン・チン首相は16日、南中部の解放記念日に南東部ニントゥアン省を再生可能エネルギーのハブ(中心地)になるよう求めた。ベトナムでは環境への配慮やエネルギー問題への深い関心から環境に優しく効率的な再生可能エネルギーへの転換意向が高まっていることが背景にある。
式典でチン首相は、ニントゥアン省はこれまで経済、観光などの面で南シナ海に面しているなどの地域の利点を生かして最適化を進めてきた実績がある、として省の党幹部、役場職員、住民の努力を称えた。
その上で同省に対してチン首相はインフラシステムの完成、経済構造の改革、人材の質の向上、投資の誘致、農業・観光・サービスの各部門での科学技術の応用強化などを努力目標として示した。
ニントゥアン省は沿岸部の省としては約58万人と最小の人口ながらニントゥアン第1、第2原子力発電所の建設計画が同省トゥアンナム県フォックジン村に進められていたが、2016年11月に財政難などから中止となった経緯がある。
主な観光資源としてチャンパ王国時代の遺跡である「ポー・クロン・ガライ塔」や上質のビーチリゾート場あり、今後発展が大いに見込まれる地域であることは間違いない。
そこに国家の再生可能エネルギーのハブを構築するという政府の政策には原発建設が中止となった省への配慮と将来への大きな期待が込められているといえる。まさに原発に代わる風力、水力、地熱、太陽熱、地中熱などによる発電でニントゥアン省全体の政治経済の底上げを狙ったものと言え、今後の成果が見込まれている。
大塚智彦(フリーランス)
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞ジャカルタ支局長などを経て2016年からフリーに。月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などに東洋アジア情勢を執筆。
※本コラムは、筆者の個人的見解を示すものであり、週刊ベッターの公式見解を反映しているものではありません。