巻頭ご寄稿
日本貿易振興機構(ジェトロ)ハノイ事務所長の小篠です。
2024年の世界経済は全体として、地政学的リスクの影響はあったものの、安定した成長を維持しました。とりわけ新興国市場の経済成長が際立っていました。ジェトロの調査においても、2024年に黒字を見込む在外の日系企業は2年ぶりに増加し、特にグローバルサウスの主要国において、旺盛な内需が日系企業の業績改善を後押しする結果となりました。日本にとって新興国市場、グローバルサウスで稼ぐことの重要性が一層増していると感じます。
新興国市場として注目を集め、日本の企業からも最も期待される国の一つがベトナムです。2024年のベトナム経済は、台風ヤギの甚大な被害があったにもかかわらず、GDP成長率は7%越えを達成し、2023年の5%成長から大きく改善しました。2025年も引き続き堅調な成長が期待されており、国会では6.5~7%の成長を目標としましたが、チン首相は8%を目指す意欲的な発言をしています。
ジェトロの調査によると、今後1~2年の事業展開の方向性について、ベトナムは「拡大」と回答した企業の割合がASEANにおいてはトップでした。ベトナム国内市場の成長を取り込んだビジネス拡大と、輸出増加が見込まれることが主な理由です。注目集める市場であるため競争は激化し、法制度や行政手続き等の課題も残りますが、ベトナムビジネスへの期待は今後も高まるでしょう。
アメリカの関税、通商政策、産業政策の変更への対応は大きな課題になりそうです。アメリカの対ベトナム貿易赤字は大きく、中国、EU、メキシコに次ぐ規模です。アメリカへの輸出の影響だけでなく、アメリカ市場を失った中国製品の流入や、サプライチェーン移管で進出する中国企業など、中国の国内経済が低調なこともあり、ベトナム市場における中国との競合も懸念されます。
ビジネスの機会と課題がある中、ジェトロは日系企業のみなさまの事業運営・拡大をしっかりとサポートして参ります。ベトナムだけでなくアメリカや中国などの情報を的確に収集し、日系企業のみなさまに適時適切に情報提供して参ります。ベトナム国内市場ビジネスにおいて大事になるスタートアップを含む現地パートナーとのマッチング、現地調達の拡大に向けたベトナム部材メーカー等との商談機会のご提供にも取り組んで参ります。
ベトナムでご活躍なさるみなさまのビジネスのさらなるご発展を心よりお祈り申し上げます。
日本貿易振興機構(ジェトロ) ハノイ事務所長 小篠春彦