ベトナムと深い関わりを持つ団体が新潟県にある。同団体は、ベトナムに支援をしながら新潟とベトナムが共に影響を及ぼし合い、共に成長できる関係の構築、ならびに両国における人材育成に力を注いでいる。経済的・物質的な豊かさだけでなく、文化的・精神的豊かさが多くの人々を救うことを思い出させてくれる同団体の三上氏の話には、子育てにも企業のCSR活動にも通じる、たくさんのヒントが隠されている。
Contents
貴団体について教えてください。
NVCは今年、設立35年目を迎えます。設立当初からベトナム支援を続けて参りましたが、数十年活動を続ける中で、私たちの行動指針も変化しました。現在は、ベトナムの貧困層の子どもたちに教育、奨学金、技術支援、心のサポートを行い、未来を切り拓く力をつけてもらうと同時に、信頼できる関係性の構築や自己成長の機会など、新潟の発展に寄与する機会と人材を創出することも目指しています。
具体的にはどんな活動をされていますか?
ベトナムでは学歴による貧富の格差が大きく、大学卒かそうでないかで5倍の収入差が生じることもあると言われています。また順調な経済成長に伴い、外資系の企業の参入も続くなか、マネジメントクラスの人材育成の必要性が新たな課題となっています。NVCは支援する側とされる側、お互いの顔が見える一対一の支援制度を築き、1998年より、ホーチミン市学生支援センター(SAC)を通じ、経済的に困難な大学生約1400人に奨学金を給付してきました。
ラムドン省のマダグイ子どもセンターでは、職業訓練・自立支援事業として、天然石ビーズを使ったフェアトレード製品の制作と販売の支援をしています。NVCのスタッフが採石場まで足を運び、強制労働が行われていないか留意するとともに、原材料調達状況もしっかり確認しています。またロンアン省のキムチシェルターという孤児院では教育支援の他、現地の子どもたちの希望により職業訓練を兼ねた縫製教室を展開しています。新潟県三条市のアパレル会社さんに商品サンプルや型紙をご提供いただき、チュニックを生産・販売できるまでになりました。
昨年までは農村地域で小学校建設の活動も行っていました。通算20校建設し、現地の方々の希望でパソコン教室も開講したのですが、大きな反響があり、現在同施設は地域の人民委員会により、広域の教育拠点へと発展しました。政府の方針で民間団体による小学校建設が難しくなったことを受け、同事業は昨年終了を迎えましたが、とても良い形で引き継ぎができたと感じています。
国内ではどんな活動をされていますか?
語学力や国際競争力があるだけではなく、地元新潟に根ざして世界的視野で物事を考え行動できる「グローバル人材」を育てることを目標に、人材育成に注力しています。ボランティア、インターン、アルバイト、スタディツアー等、様々な受け皿を用意しています。昨年の8月には、協力企業の一社、株式会社イソメディカルシステムズ様が、ベトナムの学生を日本に招待してくださいました。新潟でも交流会が開催され、学生たちは「これほど積極的な議論ができるワークショップは初めて」と良い刺激を受けていました。
また2017年からは地域若者サポートステーションのジョブトレーニングの受け入れ団体として、引きこもりの若者たちの支援も行っています。日本の若者たちが事務所内でベトナムをはじめとする様々な国の若者たちと少しずつ交流を重ね、他国の様子、自分と家族を大切にするベトナム人の価値観などを学び、気づきを得た瞬間、まさに化学反応の瞬間を目の当たりにすることもあります。その他、年に1回チャリティーバザーも開催しています。
社会貢献者表彰を受賞したことで変化はありましたか?
地方の小さな団体である私たちの活動を見て、評価してくださった方々がいらっしゃるということが大きな励みになりました。授与式では世界中で活躍する他の団体の皆さまと知り合うことができ、モチベーションも高まりました。また受賞時には新潟の新聞社が取材に来てくださり、新しいつながりを得ることもできました。深く感謝しております。
今後のご予定は?
ベトナムに進出する新潟の企業、新潟に留学をするベトナム人学生が増え、新潟とベトナムのつながりもより一層深まっています。以前は支援される側であったが今度は自分が支援をする側になりたいと、活動を支えてくれるベトナムの若者たちも増えています。今後もベトナムへの支援を充実させ、ベトナムと新潟のつながりに貢献していきたいです。同時に国際協力団体として、日本の若者が世界に触れる機会を創り、若者に響くかたちで世界の情報を発信する役割を担う重要性と責任も感じています。日本・海外と線引きしてどちらかを支援するのではなく、双方をリンクさせ、日本と他国の困難な状況が同時に解消できるような策を講じていきたいと考えています。