駿河台学園が開発した、実践的な日本語運用力を測定することに特化した「日本語能力評価試験(JPET)」がこの度ベトナムで受験できるようになった。ベトナム人従業員の日本語能力の伸長度を見るのに適しているとのこと。
同試験の特長と活用方法について、開発者の駿河台学園、ならびにベトナム国内で同試験の運営を担う広済堂HRベトナム、両社の代表者にベッターが独占取材を行った。
「日本語能力評価試験(以下JPET)」とは?開発の経緯は?
日本語学習者が多い国として、中国、ベトナム、ネパール、ミャンマー、などが挙げられます。私共が過去4年間に日本国内で実施した試験の受験者数上位国もこれらの国々ですが、コロナ禍では中国の受験者数が減ったこともあり、受験者数1位はベトナムで、全体の45.1%を占めました。去年11月に日本国内のイベントでお会いしたことをきっかけに、広済堂さんの力をお借りし、この度ベトナム国内での「JPET」の実施が実現しました。
「JPET」の特長とは?
「JPET」の大きな特長は1000点満点のシングルスケールスコア(※注釈1)で評価する全レベル対応型試験であることです。処理のスピードが速く、試験結果は10日ほどでお手元にお届けしています。
シングルスケールスコア評価のもうひとつの利点は、学習の進捗度が測れることにあります。日本語学校の皆さまには、「JPET」が日本に外国人労働者を送り込むための入管対策試験ではないことをご理解いただいた上で、学習者がどのレベルのJLPTを受験すべきか、客観的な判断材料にしたり、日本語を学びたいという気持ちを育てたり、教員の指導力を評価したりするためにご活用いただいております。
JPETのもうひとつの大きな特長は、試験日程や会場が定められた公開型の検定試験と、学校や企業が都合の良い日時で学内、社内で実施できるプレースメントテストの2種類の実施形式があることです。プレースメントテストは、学習の進捗状況の確認や、企業内における研修や人事評価の一環としてご活用いただいています。
企業内における「JPET」の活用法とは?
1点目は採用時の日本語能力の評価です。候補者の日本語能力は履歴書に書かれているN1、N2などのJLPTのレベルで判断するのが一般的ですが、その資格が何年も前に取得したものなのか、継続的に運用されてきたものなのか。また一口に合格者といっても実際の能力の差には開きがあり、実力が分かりにくいのが問題となっています。
2点目は採用後の能力評価です。企業側としては教育訓練や能力開発の成果をはかるため、社員側からは学習の励みとするために「JPET」は有効であると評価されています。特に定期的に試験を実施することによって、社員の日本語能力の伸長度をはかることができます。
3点目は能力の数値化です。ベトナム人は日本人と比較すると昇給昇格面談での交渉や主張が激しい傾向があります。その上、日本本社のような組織体制もなく、現地の経営者の方がすべておひとりで対応されているケースも多く、日本人経営者の方のお悩みのひとつとなっています。能力・スキルの一部だけでも、点数で可視化できれば客観的な評価材料のひとつとしてご活用いただけるかと思います。
日本語の難しさ、考えをストレートに出さない日本文化への不安、為替レートの問題などもあり、日本で働きたいという人は減少しています。「評価」というとネガティブな印象になりがちですが、合否ではなく、少しずつ自分の成果がみえるスコア方式の試験を採用することで、日本語への興味や学習意欲を向上させ、裾野を広げることができればと願っています。そのためにも、初年度150社を目標に掲げ、「JPET」の普及を目指しています。ローカル社員の日本語力でお困りの企業さんは多いです。私が窓口となり担当いたしますので、まずはご相談ください。
級別の合否評価ではなく、1種類の試験問題を使用して点数制で評価する
※注釈2
本文記載の受験料は現段階での予定額につき、受験料や詳細については要問合せ
長い間、ある日本語試験の試験問題の作成をお手伝いしてきた実績もあり、試験問題作成のノウハウは確立していますが、問題の質の確保のため、日本語教育で著名な公立大学法人国際教養大学(AIU)の特任教授、伊東祐郎先生にもアドバイザーとしてご意見をいただいております。