巻頭ご寄稿
日本とベトナムの首脳は、2023年11月、両国関係を「アジアと世界における平和と繁栄のための包括的戦略的パートナーシップ」へと発展させ、その後、幅広い分野において、両国間の協力が着実に進展し、国民間の相互交流も一層活発になっています。
昨年は、日本、ベトナム双方で政治のリーダーシップが交替しましたが、石破茂総理は、就任以降、国際会議の機会に、ファム・ミン・チン首相やルオン・クオン国家主席と相次いで会談しました。さらに、12月にはチャン・タイン・マン国会議長が訪日され、ハイレベルでの交流が絶え間なく行われており、幅広い分野での日越間協力を今後も進めていくことが確認されています。
また、ベトナムの経済は、近年、ASEAN各国でトップレベルの経済成長を実現しており、日本企業の投資は、製造、エネルギー、小売をはじめ、幅広い分野で進んでいます。ODA案件では、日越両国の協力を象徴する都市鉄道プロジェクトであるホーチミン一号線が昨年12月についに開業しました。さらに、日本に滞在するベトナム人も昨年60万人を超えました。このように、日越間では、幅広い分野において具体的な協力が着実に進展し、国民間の相互交流も一層活発になっています。
ベトナムは今、20年後の2045年に先進国入りするという目標を掲げ、トー・ラム共産党書記長の下でのリーダーシップによって開かれる「新しい時代」に向けて国家を大きく飛躍させようとしています。この機会をとらえ、ベトナム政府が戦略的インフラとして掲げる交通運輸、デジタル、エネルギーの各分野、また、半導体等のハイテク分野やDX、GX、高度人材の育成等の新たな分野において、ベトナムの更なる発展のために、民間の企業の方々と共に、ベトナムと更に深い協力関係を構築していくことができると考えています。
また、トー・ラム書記長は、浪費の撲滅、経済の効率化、政府の組織再編も打ち出しています。ベトナムの法律や行政手続きも含む投資環境が更に改善され、日本企業を含む外国企業の対ベトナムの投資の促進や各国ODAプロジェクトの円滑な実施につながることを強く期待しています。行政手続きの簡素化、透明化、許認可の迅速化が進み、現在活動している企業の事業が促進されることは、日本企業の新たな投資を呼び込むことにつながります。
トー・ラム党書記長の下での「新しい時代」は、日本とベトナムのパートナーシップの更なる発展・拡大をもたらす好機となるものです。日本は、引き続き、「新しい時代」においても飛躍をとげるベトナムの最良のパートナーとなることを強く期待しています。
駐ベトナム日本国特命全権大使 伊藤 直樹