日系企業が注意する点
ベトナム事業を進める上では、ベトナム人従業員の協力が不可欠です。そのベトナム人従業員のパフォーマンスを最大化し、他方で、事業者の利益を守るためにベトナム労働法の知識はマストと言えます。
本記事では、ベトナム事業を始めて間もない企業やベトナム進出を考えている企業向けに、基本的ではありますが、陥りやすいベトナム労務の落とし穴について法的な観点から解説をします。
日本では副業禁止から副業を認める企業が増えてますが、ベトナムにおいて副業の取扱いはどのようになっています?
日本の労働法とベトナム労働法の考え方は少し異なりますが、いずれも副業の禁止を行うことができる場合があります。
両者の考え方を教えてください。
日本の労働法では、就業規則や労働契約で副業を禁止することができ、それが違法と判断された裁判例などは基本的には存在しません。
他方で、ベトナム労働法では、事業に支障が生じたり、秘密保持上の問題が生じる等の合理的な理由がなければ副業を禁止することは違法と考えられています。
他方で、ベトナム労働法では、事業に支障が生じたり、秘密保持上の問題が生じる等の合理的な理由がなければ副業を禁止することは違法と考えられています。
次に、ベトナムで複数の職場で働いている場合には社会保険の取扱いはどうなりますか。
社会保険法2条1項によれば、1か月以上の労働契約を締結した労働者は、社会保険に加入しなければなりません。複数の労働契約を締結した場合、最初に締結した労働契約のみに従って社会保険に加入するものとするとされています(同法第85条4項)。
同様の場合に、健康保険の取扱いはどうなりますか?
健康保険については、3か月以上の労働契約を締結した労働者は、健康保険に加入しなければなりません(健康保険法12条)。複数の労働契約を締結した場合、最高額の給与を定める契約に従って健康保険に加入するものとされています(同法13条)。
他に注意すべき点はありますか?
労災保険の取扱いも注意すべきです。労働衛生安全法43条によれば、1か月以上の労働契約を締結した労働者は、労災保険に加入しなければなりません。しかし、納付責任は、労働者ではなく、使用者にあることに注意する必要があります。使用者は、締結した労働契約のすべてに従い、労働者のために、労災保険に加入するものとされています(同法43条2項)。
次に、2つ以上の職場で働いている場合の残業規制や休暇等の取扱いについてはどのように判断されますか。
残業規制・休暇のいずれもそれぞれの労働契約やベトナム労働法の定めが個別に適用されます。
続いて、労働者を採用する前に試用期間があると思いますが、その概要について教えていただけませんか?
試用期間は、多くの大卒の従業員であれば60日間とされています。また、日本法と異なる特徴として、試用期間中に能力不足等で労働契約を締結しない場合に、損害賠償等なしで使用契約を解除することが可能です。
日本法での試用期間の取扱いはどのようになりますか?
日本法では、使用期間中についても労働契約が成立しており厳格な解雇規制が適用されます。従って、能力不足等を理由に試用期間終了後に従業員に辞めてもらうことは法的には難しいといえます。
最後に、違法なストライキを行った従業員は直ちに解雇することができますか?
違法なストライキに参加した労働者に対する懲戒処分は、ストライキが合法ではないという裁判所の決定が下されたとしても、労働者がストライキを停止せず、職場復帰しない場合にのみ、違反の程度に従って、労働に関する法定の規定に基づき、行うことができるとされています(労働法第217条2項)。
そうすると、簡単には解雇できなさそうですね。
その通りです。
ありがとうございました。
ベトナム明倫国際法律事務所
今回の執筆者
ホーチミン事務所代表弁護士
盛 一也(もり かずや)
k-mori@meilin-law.jp
・京都大学総合人間学部 卒業、中央大学法科大学院 卒業、2015年12月弁護士登録、2016年1月税理士法人山田&パートナーズ入所、2018年11月弁護士法人Y&P法律事務所転籍、2020年1月明倫国際法律事務所入所。座右の銘は、兵は神速を尊ぶであり、常に迅速な役務提供を実践。専門分野は、国際関係取引/スタートアップ法務/各種契約書・規定整備/人事労務対応/商標等知的財産戦略。使用言語は、日本語、英語。趣味は筋トレとサウナ。
ベトナム明倫国際法律事務所とは
ベトナム明倫国際法律事務所は、日本語が堪能なベトナム人弁護士・スタッフ及び日本人弁護士・スタッフのチーム対応により、法務からビジネス慣習、ベトナム子会社の組織作りやコンプライアンス体制構築など、幅広い業務に、迅速かつ専門的に対応しております。ベトナムにおける日本人及びベトナム人コミュニティの広範なネットワークと、ビジネス法務のエキスパートによる豊富な経験・知識・ノウハウを生かし、ベトナムビジネスでのビジネススキームや経営戦略策定に至るまで、頼れるビジネスパートナーとして、皆様のベトナムでのご成功をお手伝いいたします。ぜひ一度、当事務所サービスを、ご利用下さい。
【弊所パッケージサービス抜粋】?一般法務サービス・顧問サービス以外に以下のサービスをパッケージサービスとして提供しております。
【弊所パッケージサービス抜粋】?一般法務サービス・顧問サービス以外に以下のサービスをパッケージサービスとして提供しております。
- ベトナムビジネスサポートサービス
- ブリーフィングサービス
- ベトナム入国支援サービス
- 駐在者向ベトナム力アップ研修
- 法務担当者育成プログラム
- 知的財産戦略コンサルティング
- 現地拠点の各種内部規程整備
- コンプライアンス対策パッケージ
- 税務調査対応
- 債権管理サービス
- 不祥事への対策パッケージ
- 新規駐在員様向けサポートサービス
住所 |
◎Hanoi Office 18F, CMC Tower, No.11, Duy Tan Str., Dich Vong Hau Ward, Cau Giay Dist., Hanoi, Vietnam ◎Ho Chi Minh Office 7F, PDD Building, 162 Pasteur Street, Ben Nghe Ward,District 1, Ho Chi Minh City, Vietnam. |
---|---|
secretary-vn@meilin-int.com | |
電話番号(hanoi) | 024-7107-6899 |
電話番号(hcmc) | 028-3535-7798 |
Youtube | ベトナム法務 分かりやすく解説 チャネル |
WEB | https://vn.meilin-law.jp/(ベトナムオフィス) https://www.meilin-law.jp/(日本本社) |