これまでベトナム調達ガイドブックの読者のみなさまより、従業員の賃金に関する情報提供のご要望を多くいただいていました。そこで今回は15年間、在ベトナム日系企業の給与や昇給率を調査し続け、230社以上のデータをまとめているICONIC Co.,Ltd.の前田さんにお話を聞きました。
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ベトナムにおける日系企業は、賃金の上昇についてどのように捉えていますか?
日本貿易振興機構(JETRO)が実施した「2022年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」(図1)によると、ベトナムにおける経営上の問題点のうち、「従業員の賃金上昇」を選んだ企業の割合が75.2%で1位となっています。2022年は円安が進んだ年でもあり、「為替変動」も同3位に入っています。ベトナム拠点の人件費を日本拠点が負担している企業にとっては、円安による実質的な賃金上昇も加わり、厳しい状況となりました。円安については、2024年に入っても状況は変わっていないため、各企業は円安を前提として体制を整えられているかと思います。
ベトナムでは企業が賃金を決定するとき、どんな指標を参考にしていますか?
主な指標ですと、地域別最低賃金、CPI(消費者物価指数)、労働市場の給与水準や昇給率を参照していることが多いかと思います。最近では日本でも賃上げの動きが出てきましたが、それでもベトナムの賃金水準の相場変動は日本より大きく、定期的に賃金テーブルを見直さないと、労働市場における競争力を失うことにもつながります。例えば、地域別最低賃金(第一種地域)について、2012年の200万VNDと2022年の468万VNDを比較すると2倍以上の金額まで上昇したことになります。(図2)
ベトナムにおける最低賃金の最近の動向はいかがでしょうか?
2024年は7月1日より6%程度上昇する見込み(インタビュー時点)です。(図3)ベトナムの民間企業が参照する最低賃金は地域ごとに規定されており、地域別最低賃金と呼ばれます。直近の最低賃金の上昇は2022年7月1月なので、2年振りの引き上げとなります。以前は毎年1月に引き上げられていましたが、コロナ禍やベトナム国内経済の停滞などにより、引き上げ時期や頻度が不規則になっています。
CPI(消費者物価指数)上昇率の動向についてはいかがでしょうか?
2011年は18.6%と非常に高く、最低賃金も年に2回引き上げが行われましたが、2016年以降だと年間の上昇率は1.6%〜3.5%の間で推移しており、急激なインフレは抑制されています。(図4)直近だと、ウクライナ危機などを背景とした原油価格の高騰などにより、2022年2月から上昇し、2023年1月には4.9%まで達しましたが、その後は2-3%台まで低下しました。(図5)ベトナムではバイクが主要な通勤手段となっていますので、2022年に原油価格の高騰でガソリン代が大きく上昇したときには通勤手当の見直しをするケースもありました。
実際のところ、ベトナムでは最低賃金で雇用しているケースは多いのでしょうか?
最低賃金を基本給としたとしても、そこに手当が加算されるため、実際の総支給額は最低賃金より高い金額であることが多いかと思います。また、進出した地域の相場水準によっては、最低賃金ではそもそも採用が難しいこともあります。以下の実際、最低賃金をもとに人件費の計画を立ててベトナムへ進出した結果、事業計画が崩れてしまったという話も聞きました。進出後に労働市場が変化した場合にはやむを得ないですが、可能な限り調査した上で意思決定されるのが望ましいかと思います。
自社の給与水準の見直しはどのタイミングで見直すのがよいでしょうか?
3年に1回程度は見直すことをおすすめしています。最低賃金や物価上昇に伴って毎年給与の水準は上がっていますので、気づかないうちに自社の給与水準が労働市場において競争力を失っていることがあります。なるべく早めに手を打つことで、離職を未然に避けられるのが理想です。労働市場の変化が大きい業界の場合には、実際に水準を引き上げるかどうかは別にして、相場環境を毎年確認してもよいかと思います。
貴社の給与や昇給率の調査レポートはどのように活用されることが多いでしょうか?
ベトナム拠点で毎年の定点観測としてご覧いただいたり、本社に提出する人件費予算の稟議書類に添える資料としてご活用いただいたりすることが多いかと思います。ベトナムの商工会議所に所属する企業数は約2,000社ですが、弊社の調査では、その10%強に当たる約230社から回答いただいているため、ベトナムに進出する日系企業のデータとしては、精度の高いデータになっています。
最後に、ベトナムに赴任される方に人事面から一言お願いします。
新しく赴任される場合、まずは現地を理解し、事業を伸ばすことが最重要事項になることが多いかと思います。一方、人事に関する取り組みにはある程度の時間がかかりますので、経営課題の中で人事に関係する内容が上位に上がっている際には、ぜひお早めに着手されることをおすすめしています。もし自社のリソースで取り組むことが難しそうであれば、弊社まで一度ご相談いただけますと幸いです。
ご協力いただき、ありがとうございました。
【情報提供協力】
ベトナムで創業して15 年のICONIC では、日本人やベトナム人の人材のご紹介、人事制度や人材育成、労務に関する組織人事コンサルティングを両軸に、企業様の成長を人事面からワンストップで支援しています。
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