本記事は、ベトナムやベトナム人に起こる出来事を多彩に切り取り、解説するコーナーです。
ベトナムは旧暦の正月であるテトを迎え、誰もが休暇を過ごしたことだろうと思う。今年は大みそかに当たるのが1月31日で、元旦に当たるのが2月1日となった。国民の多くは1月29日の土曜日から2月6日の日曜日までの9日間をテト休暇として楽しい正月を故郷や旅先などで家族や親族と満喫したことだろう。
日本や諸外国と同じようにベトナムも例外ではなく、テト休暇は家族や親族と過ごす貴重な時間で、故郷や旅先に向かう人々の「大民族移動」の時期となる。今年も昨年同様にコロナ感染拡大防止の移動制限やワクチン接種の証明書提示など各種の制限下での移動となるが、職場からのテトボーナスやお土産を沢山手にして誰もが笑顔で故郷に向かったことだろう。東南アジアではテトのように旧正月を休暇として楽しむベトナム以外にもクリスマス休暇が本格的なフィリピン、断食明けのレバランで一斉に帰省するイスラム教徒の多いインドネシア、マレーシア、ブルネイなど様々で文化、宗教、習慣の多様性がみてとれる。
テトにはベトナム北部では桃の花を、中部から南部にかけては黄色い梅や金柑などが売られ、それを自宅などに飾って華やかな雰囲気で正月を迎えるのが伝統という。なんでも金柑は黄色い実がたわわに実ることから子孫繁栄や金運向上が託されるといわれるめでたい植物とされている。正月となれば日本と同じように子供たちなどには「お年玉」が配られるため、テト前の店には各種の「お年玉袋」が並ぶ。
テトを前にショッピングセンターや商店には「正月を迎える準備」にお年玉袋をはじめとした色とりどりの各種祝いの必需品が並び、賑わいを見せたことと思う。テトを彩る定番の食べものといえば、バインチュンあるいはバインテッと呼ばれる青豆や豚肉をもち米で包み蒸したもので、テトの食卓を飾るものとして知られている。この時期は在留日本人も一時帰国したり旅行に出る人が多いが、今年もコロナ禍でそれも難しく、ベトナムに留まったままテトを迎えた人も多かったのではないだろうか。
同じ理由で帰省を断念したベトナム人の知人や友人とともに「どっぷりベトナム流につかったテト」を堪能するには今年はいい機会だったと思うが、どうでしたか。テト休暇を終えて職場や学校などに戻り、また「新しい年」が始まっている。
※本コラムは、筆者の個人的見解を示すものであり、週刊ベッターの公式見解を反映しているものではありません。