【第17回】弁護士が解説する、失敗しないベトナム不動産投資 外国人(日本人)がベトナム住宅を購入、所有する際の法制度と仕組み

ベトナムの現行住宅法の施行から5年以上が経過した今日、ベトナムにおいて住宅を所有する外国の組織・個人の数は大幅に増加しました。2015年7月から2020年7月までの5年間におけるホーチミン地域の最大手不動産企業17社(推定数によると約70~80%の市場シェアを占める)を対象とする統計によれば、外国の組織・個人に譲渡された一軒家やアパートの総軒数は12,335軒です(ホーチミン市の不動産協会(HoREA)が発表したデータよる)。一方で、不動産専門家によれば、外国人による住宅取得数はいまだ少数にとどまり、最大でも市場取引の総件数の2%に過ぎないと予想されています。

外国の組織・個人の購入率が低い原因の一つとして、住宅法が公布された初期の段階では、法的メカニズムが明確ではなく、国家機関、不動産事業者や住宅の買い手は十分に慣れていないところで、取引を行う恐れがあったことが挙げられました。現在は、法的問題がほぼ解決されたことにより、安心してベトナム住宅の取引をすることができると考えられます。また、コロナ禍の状況が落ち着けば、外国人による住宅の取引が再開されることが期待されます。

編集部
ベトナム住宅法の改正は、以前に施行されたため、日本人を含め外国人は、ベトナムでの住宅購入に関する法規定や条件などを既に把握しているかもしれません。しかし、まだ外国人による住宅取得数は少なく、懸念材料はありますね。その法的な面での心配事を解決するために、本日、日本人がベトナム住宅を購入・所有する際の法制度と仕組みについて、分かりやすくに紹介していただければと思います。
まず、住宅の購入・所有をするために、外国人に対して、どのような資格が必要ですか。
弁護士
ベトナム住宅法159条1項の規定によって住宅を所有することができる外国の組織・個人の資格は、以下のようになります。

  • 対象者?この法律及び関連法令の規定に従い、ベトナムにおいて、プロジェクトによる住宅の建築投資をする外国の組織・個人
  • 対象者?ベトナムで活動している外資系企業、外国企業の支店・駐在員事務所、外国投資基金・外国銀行の支店
  • 対象者?ベトナムへ入国できる外国の個人
弁護士
  • 対象者?は、住宅建築プロジェクトへの投資にて住宅を所有する形態です。
  • 対象者?は、ベトナムにおいてベトナム法に従い設立され活動している企業・組織(外国投資企業、支店、駐在員事務所、外国投資基金など)でなければなりません。
    これらの企業・組織は、ベトナムにおける活動許可を証明するために、投資登録証明書又は他の関連証明書(活動許可書、活動登録証明書等)を取得しなければなりません。また、この対象者は、自社の管理職・従業員のための居住を目的とする、又は、不動産事業を行うことを目的とする場合に限り、住宅を所有することができます。
  • 対象者?は、ベトナムへ入国する資格のある外国の個人です。ただし、法律規定に従い、外交・領事館の特権及び免税を受ける資格のある外国人は除かれます。外国の個人は、購入予定の住宅の所在地において、一時的又は恒久的な在留を登録する必要はなく、外国の個人がベトナムへ入国できる対象かどうかは、その個人の有効なパスポートにある入国証印シールを通じて表示されます。
編集部
ありがとうございます。外国の組織・個人が所有できる住宅の条件はありますか。
弁護士
はい、3つあります。

  • 1つ目は、住宅形態の条件です。外国の組織・個人が所有できる住宅は、商業住宅建築プロジェクトによる共同住宅及び/又は個別住宅でなければなりません。
  • 2つ目は、地域の条件となります。外国の組織・個人が所有できるのは安寧・国防保証(国家安全保障)地域に所属しない地域です。
  • 3つ目は、所有できる軒数の条件です。共同住宅(混合使用目的の共同住宅を含みます)であれば、住宅の総軒数の30%を超えない数に制限し、個別住宅(半戸建住宅、個別住宅、別荘を含みます)なら、プロジェクトごとによる個別住宅の総軒数の10%を超えず、最大250軒を超えない数に制限します。
編集部
そのほか、ベトナム人と違っている条件や制限はありますか。
弁護士
そのほかには、所有期間ですね。
ベトナム人の住宅所有期間は、期間無しで永久に所有することができます。一方、外国人の場合は、購入、買受特約付賃貸、受贈、相続の際の合意文書に基づいていますが、住宅所有権証明書の発行日から50年間を超えては行けません。
弁護士
ただ、住宅所有期限切れ前に、所有者は延長する権利があります。また、住宅所有期限切れ(延長期間を含む)前に、所有者は、ベトナムにおける住宅を所有する資格のある対象者に、住宅を売却又は贈与することができます。住宅所有期限を過ぎても、所有者が売却又は贈与しない場合、その住宅は国の所有物となります。
編集部
それは、安心ですね。また、外国人にとって、気になるのは、住宅所有のプロセスです。
弁護士
そうですね。図面でまとめましたので参考にしてください。

編集部
よく理解できました。
最後に、何か注意点などお伝えいただけますか。
弁護士
最後に3点を留意させていただきたいと思います。
1点目として、ベトナムでは、資本を調達するため、事業者が銀行に抵当権を設定する住宅建設プロジェクトは少なくありません。従って、手付を交付する前に、外国人に対して、ベトナムにおいて住宅所有の条件を確認すること。さらに、住宅を譲渡する際に、抵当権抹消の条件と手続を確認する必要があります。

2点目は、外国の組織・個人は、預金契約書及び住宅購入契約書に基づいて預金及び住宅購入金額を事業者に送金しなければなりません。外国為替管理法律の規定により、外国の組織・個人は取引金額の出所を証明する必要があります。組織や個人が銀行を使わず取引をしたり、金額出所を証明する根拠を提出できない場合、賃貸物件収益又は住宅譲渡で得た収益を、海外に移転することが困難になります。

3点目は、ベトナムにおける財産所有(住宅所有)は、ベトナムへの投資と同様ではなく、住宅を購入後の外国の個人は、住宅を所有したことのみを根拠としてビザやベトナムでの長期滞在資格を申請することができません。

編集部
ありがとうございました。

ベトナム明倫国際法律事務所

今回の執筆者

弁護士・調停人 
ブイ・ホン・ズオン(DUONG)
duongbui@meilin-law.jp 
・日経企業への法務サポート経験訳7年間。日本語堪能

ベトナム常駐弁護士
原 智輝(はら ともき)
t-hara@meilin-law.jp 
・日系企業への法務サポート経験2年間、日本語・英語堪能

ホーチミン事務所代表弁護士
盛 一也(もり かずや)
k-mori@meilin-law.jp 
・京都大学総合人間学部 卒業、中央大学法科大学院 卒業、2015年12月弁護士登録、2016年1月税理士法人山田&パートナーズ入所、2018年11月弁護士法人Y&P法律事務所転籍、2020年1月明倫国際法律事務所入所。座右の銘は、兵は神速を尊ぶであり、常に迅速な役務提供を実践。専門分野は、国際関係取引/スタートアップ法務/各種契約書・規定整備/人事労務対応/商標等知的財産戦略。使用言語は、日本語、英語。趣味は筋トレとサウナ。
ベトナム明倫国際法律事務所とは
ベトナム明倫国際法律事務所は、日本語が堪能なベトナム人弁護士・スタッフ、及び日本人弁護士・スタッフのチーム対応により、法務からビジネス慣習、ベトナム子会社の組織作りやコンプライアンス体制構築など、幅広い業務に、迅速かつ専門的に対応しております。

ベトナムにおける日本人及びベトナム人コミュニティの広範なネットワークと、ビジネス法務のエキスパートの豊富な経験・知識・ノウハウを生かし、ベトナムビジネスについてのビジネススキームや経営戦略作りに至るまで、頼れるビジネスパートナーとして、皆様のベトナムでのご成功をお手伝いします。ぜひ一度、当事務所のビジネスブリーフィングサービスやご相談サービスを、ご利用下さい。

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