2026年のベトナムは、電力不足のリスク回避に向けたインフラ整備と炭素取引市場の運用開始という、エネルギー転換の節目を迎えます。PDP8を軸に持続可能な成長を目指す同国の政策と市場環境を詳報します。
供給安定化とエネルギー安全保障の強化
ベトナム商工省(MOIT)のNguyen Hoang Long次官は、2026年の電力供給が水文学的条件や燃料価格の変動により不確実な状況にあると警鐘を鳴らしました。これを受け、ベトナム共産党政治局は「エネルギー分野のブレイクスルーに向けた決議(決議第70-NQ/TW号)」を採択し、エネルギー安全保障の抜本的な強化に乗り出しています。
同決議は、第8次国家電力開発計画(PDP8)の着実な実施とともに、民間の投資意欲を削ぐ制度的な障壁を取り除くことを求めています。具体的には、2026年から2030年の期間において、エネルギー部門の発展には約777億米ドル(約11兆6,550億円)の巨額な投資資金が必要と試算されています。このうち約150億米ドルが送電網整備に、残りが電源開発に充てられる計画です。政府は、電力不足が経済成長の足かせにならないよう、石炭火力から天然ガスや再生可能エネルギーへの転換を急ぎつつ、隣国からの電力輸入拡大や蓄電システム(BESS)の導入促進を2026年の最優先課題の一つとして掲げています。
再生可能エネルギー投資への優遇措置
政府は再生可能エネルギーおよび新エネルギー分野の投資を加速させるため、強力な優遇策を打ち出しています。最新の指針によれば、グリーン水素やグリーンアンモニアなどの新エネルギー開発プロジェクトに対し、海域利用料や土地賃貸料の免除、法人税の優遇といった包括的な支援策が2026年から本格的に適用されます。
特筆すべきは、これらのプロジェクトが直面する財務的リスクを軽減するため、最大12年間の借入金返済期間中において、長期売電契約(PPA)に基づき発電量の最低70%の買い取りを保証する仕組みが導入された点です。この措置は、投資家が抱いていたキャッシュフローの不確実性を払拭することを目的としています。
また、電力系統への優先的な接続や、スマートグリッド構築に向けた技術支援も計画されており、洋上風力や屋上太陽光発電の自給自足モデルも奨励されています。2026年は、これらの優遇策を背景に、具体的な電源開発案件の着工が相次ぐことが期待されており、エネルギー構造のグリーン化が実務レベルで進展する見通しです。
国内炭素市場の創設と排出枠取引
ベトナムの環境政策における2026年の最大の焦点は、国内炭素取引市場の試験運用の本格化です。
天然資源環境省(MONRE)の主導により、ハノイ証券取引所(HNX)が炭素排出枠の取引所を運営し、ベトナム証券保管振替機構(VSDC)が決済を担う体制が正式に整えられました。最新の規定に基づき、まずは火力発電や製鉄、セメント製造などの高排出産業を対象に、排出枠の割り当てとモニタリングが開始されます。
2028年末までの試験運用期間中、参加企業に対する取引手数料の免除などの支援が行われる一方で、排出量の報告義務は厳格化されます。企業は、2029年からの本格稼働を前に、自社の排出量を正確に把握し、削減技術の導入や排出枠の調達といった具体的なカーボンマネジメントを2026年から実践することが求められます。
本市場の創設は、国際的な炭素国境調整措置への対応力を高めると同時に、ベトナム国内のグリーン金融を活性化させる基盤となります。これにより、企業の環境対策は、実効性を伴う重要な経済課題へと深化します。
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