2都県にまたがる日本最大級のまちづくりを成功させ、今年創立100周年を迎えた東急グループ。その東急とベトナム地場企業ベカメックスの合弁会社「ベカメックス東急」も、ベトナムで事業展開し10年目となる。奇しくも今年同じく創業10周年を迎えた、ベトナム国内外で26の店舗を展開するレストラン「Pizza 4P’s 」。偶然のようでもあり必然でもあるようなこの2社の出会いによって、巨大新都市「ビンズン新都市」が今急速に、そしてイノベイティブに進化しようとしている。ベトナムに新旋風を巻き起こす一大プロジェクトのカギを握る3人の日本人が新都市で挑み、目指すものとは何か。
ビンズン新都市でのPizza 4P’sフラッグシップ店
平田 周二 氏
BECAMEX TOKYU Co., Ltd. Deputy General Director /COO
2002年 東京急行電鉄 株式会社(現 東急 株式会社) 入社。東急グループのショッピングセンター現場や、リテール部門(百貨店、スーパーマーケットの経営管理)等を経て、2011年よりベトナム事業立上げ、2016年より2回目の赴任中(通算9年目)
BECAMEX TOKYU Co., Ltd. Deputy General Director /COO
2002年 東京急行電鉄 株式会社(現 東急 株式会社) 入社。東急グループのショッピングセンター現場や、リテール部門(百貨店、スーパーマーケットの経営管理)等を経て、2011年よりベトナム事業立上げ、2016年より2回目の赴任中(通算9年目)
益子 陽介 氏
Pizza4P’s Founder&CEO 大学卒業後、商社を経て、サイバーエージェントに入社。ベトナム投資事業部を立ち上げ、インターネットサービス企業の投資に携わる。2010年に退社し、飲食店勤務の経験なしで、2011年にホーチミン市でピザレストラン、Pizza 4P’sをオープン。開店後すぐにTripAdvisorホーチミン市レストランランキング1位を獲得する。Pizza 4P’s を人気店に育て上げ、店舗数を拡大。2014年には、AERA誌の「アジアで活躍する日本人100人」に選ばれた。ベトナム国内だけでの事業展開にとどまらず、世界展開を見据えて活動中。プライベートでは、二児の父でもある。
Pizza4P’s Founder&CEO 大学卒業後、商社を経て、サイバーエージェントに入社。ベトナム投資事業部を立ち上げ、インターネットサービス企業の投資に携わる。2010年に退社し、飲食店勤務の経験なしで、2011年にホーチミン市でピザレストラン、Pizza 4P’sをオープン。開店後すぐにTripAdvisorホーチミン市レストランランキング1位を獲得する。Pizza 4P’s を人気店に育て上げ、店舗数を拡大。2014年には、AERA誌の「アジアで活躍する日本人100人」に選ばれた。ベトナム国内だけでの事業展開にとどまらず、世界展開を見据えて活動中。プライベートでは、二児の父でもある。
高杉 早苗 氏
Pizza4P’s CPO (Chief Peace Officer) 慶応義塾大学法学部卒業後、サイバーエージェントに入社。社内で益子氏と出会い、結婚。益子氏の起業計画実行のため、ベトナムに移住。益子氏とともに、Pizza 4P’sを創業。人事、スタッフ育成、新規出店計画などを担当、同社を大きく成長させる。オープン当初のロゴは、先祖である高杉晋作の家紋、「丸に武田菱」から着想を得たもの。プライベートでは、二児の母でもある。
Pizza4P’s CPO (Chief Peace Officer) 慶応義塾大学法学部卒業後、サイバーエージェントに入社。社内で益子氏と出会い、結婚。益子氏の起業計画実行のため、ベトナムに移住。益子氏とともに、Pizza 4P’sを創業。人事、スタッフ育成、新規出店計画などを担当、同社を大きく成長させる。オープン当初のロゴは、先祖である高杉晋作の家紋、「丸に武田菱」から着想を得たもの。プライベートでは、二児の母でもある。
-50年、100年単位のまちづくり-
根底にある10年越しの想い
根底にある10年越しの想い
お二人との出会いは10年前、僕がお店に足繁く通い始めた頃ですよね。お店にお邪魔する度に「ビンズン新都市いいですよ」って推していたんですけど、全然相手にしてくれなくて(笑)。県庁所在地の移転や「ソラ・ガーデンズ」竣工以前に一度(ビンズン新都市を)見に来てもらいましたよね。
そうでしたね。都市計画とか県庁を動かすとか、この人騙されているんじゃないかなぁ…と心配したくらいにまだ何もなくて(出店の)イメージも全く湧かなかった(笑)。
総合庁舎の移転に合わせて2015年1月に商業施設「Hikari」第1期をオープン。住宅の販売も好調で、住民の皆さんからのご要望もあり、2017年に商業施設建設計画第2期を始動。そのタイミングで再度お二人にアプローチしました。
バス路線の開通なども含めた街の機能整備を行い、長い年月をかけてまちづくりに取り組んでいるのだと熱いお話を伺いました。レストランも混んでいて、需要の多さも実感できました。
お二人に「長期的な観点と広い土地を持つ東急さんだからこそ可能な、ホーチミン市内ではできない店を実現できるならば面白い」と言われ、考えました。その後2018年にXu?n Th?y通りでオープンされたコンセプトショップを拝見して「単独の店舗だけに留まらせず、施設全体で具現化してみませんか」とご提案させて頂いた。
創業時からエコリゾートを作ることを目標に掲げていて、自然とのつながりを感じられる場所を作ることは常に僕らのテーマでした。Xu?n Th?y通りの店舗が成功して、これを街単位で実行して、もっとインパクトを出すことができたら素晴らしいなと考えていたので、東急さんとご一緒させていただくことに決めました。平田さんの「50年、100年単位のまちづくり」という言葉は特に響きましたね。Xu?n Th?y通りの店舗を作る時も、50年とまではいかないものの、10年後に何を伝えられるかということを考えながら動いていたのでワクワクしました。
-Made to Enlighten-
人々、地域、未来を輝かせるための新しい取り組み
人々、地域、未来を輝かせるための新しい取り組み
(新しいアイディアに対して)フレキシブルで、長期的な観点で考えてくださる東急さんの寛容力、懐の深さには本当に驚かされます。
嬉しいお言葉です。お二人が(コンセプトを)お店で体現されるのを見てきたので、皆さんが良いと思うものをうまく受け入れて実現すれば、本当に良いものができるのではないかと、純粋に思えたんです。まず早々にクリエイティブエージェンシーをご紹介くださり、弊社の担当者と一緒にブランドコンセプト「Made to Enlighten」を作り上げてくれた。出店契約前なのに(笑)。事業上のハードルは色々あったのですが、ベカメックス東急のスローガン「Always New」に則り、他の街との差別化を可能にする新しいことを求め、ただひたすら寛容に受け入れてきました。
お二人のご協力なしでは施設全体でのごみの削減、コンポスト、エディブルガーデン(※1)、アクアポニックス(※2)などのアイディアは生まれなかった。輸送コストやCO2の削減に貢献できることはもちろん、その仕組みを理解してもらうことで訪れる人から共感や愛着も得られるかと期待しています。
企業としてこれらの取り組みを決断をするのは、素晴らしいことです。うちもカンボジアでゼロウェイスト、ごみ排出ゼロを目指したレストランを運営しているのですが、ランニングコストだけで3%余計に経費がかかるんですよ。それを商業施設で実践するっていうのは、ミラクルです。
(社会課題が変化するなか)我々は次の100年で何をすべきか。当初は日本の良いものを輸出したいとベトナムでの事業をスタートさせましたが、現地で10年過ごし、ベトナムでできた東急のノウハウを日本に持ち帰る、というかたちがあってもいいのではないかと思うようになりました。
実際日本で培った技術的なノウハウや東急というブランドはベトナムではほとんど役に立ちませんでしたし。唯一通用したのは、東急マンとしてのDNAですね。我々はビジョンを持ってまちづくりをしています。一緒に組んでくれれば50年後、100年後、必ずいい街にしますという東急論を信じてやってきたら、結果がついてきた。益子さんも、ファミリーマートさんも、AEONさんも、川崎フロンターレさんも韓国企業も台湾学校もビンズン新都市に来てくれたんです。
機能的分断から包摂へ
食の提供からライフスタイルの提案へ
食の提供からライフスタイルの提案へ
ビンズン新都市でのフラッグシップ店舗出店を決めたのは、まちづくりに関われることに大きな意義を感じたからです。創業当時からの目標に近づくためにも大切な位置付けとなる試みなので、僕らも利益以上の重要性を感じています。香港の「SHIBUYA 109」立ち上げで一度ベトナムを離れたエースの平田さんがベトナムに帰ってきたことに東急さんの本気を感じたことも参画の決め手ですね(笑)
「沿線をつくる、まちをつくる」という東急のブランド価値を生かして「日本のまちづくりパッケージ」を輸出したいと考えて、2011年の事業立ち上げから関わっています。そもそも個人的な気合いが違うんでしょうね(笑)。だからビンズン新都市で、初の試みの実現を決めてくださって本当に嬉しいです。
都市部の子供たちが自然の仕組みや食べ物がどこからきたかを理解していないことが問題だと感じているので、フラッグシップ店ではゼロウェイスト、ワークショップ、ハーブガーデン、アクアポニックスなどを通じて課題解決に貢献できればと思っています。
街や施設全体での取り組みを、実際にその場で見て感じて欲しい。子供だけでなく大人にも刺激や考えるきっかけを提供できたらと考えています。
例えば「Hikari」の隣地を市民農園にして住民の人と一緒に土づくりから始めて野菜を育てていくとか。エデュテーメントになり住民の満足度も、まちの価値も上がるのではないかと。
市民参加型の重要性は我々も感じていて、ドイツまで視察に行ったりしています。牛の乳搾りからチーズ作りまで一連の体験ができるような体験型の施設もできたらいいですね。
都市は働く場所、郊外は住む場所という時代ではもうないので、街のなかに日常性と非日常性を混在させたい。その実現にはパートナーが不可欠です。幸い弊社はビンズン新都市に自社の土地が広大にあるので、グランピングができる農園とか、ピザ釜のあるキャンプ場とか、キャンプ場のノウハウをお持ちの会社さんにもご協力いただき実現していきたいです。
ベトナムへの貢献、そしてベトナムから世界へ
経済成長を遂げた日本に住んできた僕らだからこそ見えることがあるのではないかという考えを念頭におきつつ「Hikari」ではテクノロジー、サステナビリティ、イノベーションの3点において地域の人達やコミュニティをインスパイアできるブランドを目指していきたいと思っています。
「Hikari」のフラッグシップ店舗がインスピレーションの源となり、サステナビリティを配慮したお店やコンセプトに共感してくださる方が、ビンズンだけでなく各地で増えていくことを願っています。フラッグシップ店舗がハノイでもホーチミン市でもなく、ビンズンにあるっていうのもいいなと(笑)。ビンズン新都市を見て、こういう街を私たちの国でも作ってみたいと思ってもらえたら嬉しい。ベトナムの人たちにそれを誇りに思ってもらえたらもっと嬉しいです。
カンボジアの店舗にはイタリアやイギリスのメディアからの取材も入っています。ビンズン新都市で実践することもグローバルに取り上げられて、それが少しでも世界がBetter Placeになることへの貢献になればと願っています。
ビンズン新都市は、コミュニティのつながりが希薄な住宅街でも、分断された都市でもなく、店も農家も働く場所も混在する多様性のある街にしたいと考えています。これを読んで自分も何か一緒にできないかなと思ってくれる人が増えてくれると嬉しいですね。我々はまちづくりディベロッパー、いわばプラットフォーマーなので、まさに駅のプラットフォームのように、人が集まり出発する地点になれればと願っています。
注釈1)エディブルガーデン:ハーブや果物などの食べられる食栽
注釈2)アクアポニックス:施設内の池で養殖している魚の排泄物を栄養素として植物が成長する循環型農業の仕組み
社名 | べカメックス東急/BECAMEX TOKYU |
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電話 | 0914-487-786(日本語) |
メールアドレス | japan@becamex-tokyu.com(日本語) |
ウェブサイト | https://tokyugardencity.com |
住所 | SORA gardens I Building, Lot C18 Hung Vuong st, Hoa Phu Ward, Thu Dau Mot, Binh Duong Province |