【ベトナムのシン層 | Vol.18】ハノイに開通した都市交通2A号線 渋滞解消、大気汚染軽減に繋がるか

本記事は、ベトナムやベトナム人に起こる出来事を多彩に切り取り、解説するコーナーです。

2021年11月6日にハノイ市中心部を走る都市交通2A号線が開通した。中心部のドンダー区カットリン駅から南西部ハドン区イエンギア駅までの全長約13キロの間を約24分で結ぶというベトナムそしてハノイ市民待望の都市交通だ。

ハノイには1901年に都市に生活する市民の足として路面電車網が整備されたが1989年までに全てが廃止、その後の近距離移動は自動車とバス、バイク、Grabが主流となり、ハノイの交通渋滞、大気汚染は年々深刻化する事態になっていた。

このため2018年にグエン・スアン・フック首相(当時)により2030年までのハノイ市交通運輸案が承認され本格的なハノイ都市交通の建設・整備計画がスタートした。ハノイ市では2010年9月に3号線の建設が開始されたが同線はフランスのアルストム社によるもので、2A号線は中国の中鉄六局集団有限公司による建設である。

総工費は当初5億5200万ドルといわれたが用地買収や安全検査の遅れなどで工期が伸びるに従い膨れ上がり、最終的には8億6800万ドルにまでなり、そのうち80%が中国からの融資という。

2Å号線が開業した11月6日以降は市民の利用促進のため開業から15日間を全線乗車無料とした。このため多くの市民が乗車して携帯電話で車窓や相互を写真撮影するなど大変な賑わいになったとニュースは伝えた。乗車料金は8000ドンから1万ドン(約40円から75円)に設定されているが、これは対抗するバス料金の約7000ドンをにらんだ価格設定で乗客誘致も目的という。

無料利用期間が過ぎると乗客数は減少したようだが、コロナ感染防止対策に加えて全線で12ある駅へのアクセスが難しいことから以前と同じくバスやバイク利用の方が便利という意見が多く、駅周辺の駐輪場、駐車場の整備と共にバス路線との調整が求められているという。 ベトナムでは南部ホーチミン市での地下鉄を含む都市交通整備計画が進行中で厳しい地質対策で日本企業も協力しているという。またハノイ当局が2050年までに都市交通を10路線まで拡大する計画を明らかにしている。

マレーシアやタイ、インドネシア、フィリピンなどのように首都の市民が気軽に利用できる都市交通がハノイ、ホーチミン市で一日も整備され、渋滞解消、大気汚染解消の切り札となることを期待したい。

執筆者:大塚智彦(フリーランス)
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞ジャカルタ支局長などを経て2016年からフリーに。月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などに東洋アジア情勢を執筆。

写真:vir.com.vn
※本コラムは、筆者の個人的見解を示すものであり、週刊ベッターの公式見解を反映しているものではありません。

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