本記事は、ベトナムやベトナム人に起こる出来事を多彩に切り取り、解説するコーナーです。
5月12日から23日までハノイで開催される第31回東南アジア競技会(SEA GAME)にはメダル獲得を目指して多くのベトナム人アスリートが挑む。メダル候補有力者の一人とされるのが女性柔道家グエン・ティ・タイン・トゥイさんで国民的人気も高くベトナム版の「やわらちゃん」的存在といえる。
1993年生まれのトゥイさんは南部チャビン省で育ち両親の勧めで柔道をはじめ、めきめきと頭角を現した。2015年のSEA GAMEでは柔道女子52キロ級で出場し、同僚がほぼ全滅するなか大方の予想を覆す活躍で金メダルを獲得した。その後も2016年のハンガリーカップで銅メダル、2017年のアジア選手権で5位、2018年のアジア・オープンで優勝、2019年には世界選手権でベスト16に進出するなど輝かしい記録を打ち立てた。
前回のSEA GAMEそして2021年の東京オリンピックでは好成績を残せなかったが、これがトゥイさんの競争心に火をつけ、今回のSEA GAMEでは何としてもメダルをと大会直前までモンゴルで合宿を続け、技を磨いてきたという。
「両親はほとんどすべての大会に同行してくれ、柔道の審判をしている兄からもいろいろ支援を受けている」と家族の支援に感謝を示すトゥイさん。今回のSEA GAMEでトゥイさんはメダル獲得を目指して全身全霊で畳に上がるとしており、その縦横無人な活躍に国民は大きな期待を寄せている。柔道家は言う「1秒の集中力を失うと場外にでている」。トゥイさんがんばれ。
大塚智彦(フリーランス)
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞ジャカルタ支局長などを経て2016年からフリーに。月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などに東洋アジア情勢を執筆。
※本コラムは、筆者の個人的見解を示すものであり、週刊ベッターの公式見解を反映しているものではありません。