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2026年ベトナム鉄鋼業界:内需拡大とHRC自給率向上および環境規制への構造転換|調達&ビジネスガイドブック2026

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2026年のベトナム鉄鋼業界は、公共投資と不動産市場の回復により内需が拡大します。熱延コイルの供給体制が強化される一方、欧州の国境炭素調整措置の本格適用に伴う脱炭素化が産業全体の重要課題となっています。

インフラ投資と不動産回復による国内需要の増大

ベトナム鉄鋼業界は2023年から2024年の低迷期を経て、2026年に新たな成長サイクルに入ると予測されています。この回復の主因は、政府が進める国家的重要プロジェクトの進展です。南北高速道路やロンタイン国際空港の建設が本格化し、建設用鋼材の需要を押し上げています。これに加え、改正土地法や改正住宅法の施行が不動産市場の流動性を高め、民間部門の住宅建設需要も復調傾向にあります。
ベトナム鉄鋼協会(VSA)の統計によれば、国内の鋼材消費量は前年比で約20%の増加が見込まれています。これまでの輸出依存型から国内市場を重視する構造への回帰が鮮明となり、鉄鋼各社は国内シェアの確保に向けた物流網の整備や供給体制の最適化を進めています。急速な都市化の進展に伴う中長期的なインフラ整備需要も、国内需要を強固に下支えする要因となっています。
鉄鋼価格は底を打ち、安定的な上昇基調に転じるとの市場分析が主流です。2026年は内需が業界全体の再興を牽引する最大のエンジンとなることが期待されています。

HRCの供給能力拡充と貿易障壁への対応強化

製造業の基盤となる熱延コイル(HRC)の分野では、2026年に供給構造が大きな転換点を迎えます。
ホアファット・グループ(HPG)が推進するDung Quat 2製鉄所プロジェクトが本格稼働を開始し、年間560万トンの生産能力が加わる見通しです。これによりHRCの自給率が飛躍的に向上し、冷延鋼板やメッキ鋼板の原材料コスト低減と最終製品の国際競争力強化が図られます。一方で、輸出環境は世界的な保護主義の台頭により厳しさを増しています。
欧州や東南アジア諸国では、ベトナム産鋼材に対する反ダンピング調査や貿易救済措置が相次いで発動されており、安定的な輸出先の確保が課題となっています。フォルモサ・ハティン・スチール(FHS)などの主要メーカーは、これら輸出に伴う地政学的な貿易リスクを回避するため、国内販売網の強化と安定供給を経営計画の最優先事項に置いています。輸出総量は伸び悩む可能性がありますが、高品質なHRCの国内供給能力の拡大が、鉄鋼産業全体の付加価値を高める構造へと移行しています。
輸出規制の強化を背景に、従来の量的拡大から質的向上への転換が業界全体で加速している状況です。

国際的な環境規制の適用とグリーン転換の加速

2026年は、国際的な環境規制がベトナム鉄鋼業の経営に直接的かつ甚大な影響を及ぼし始める年です。EUの国境炭素調整措置(CBAM)が本格的な支払段階へ移行し、ベトナムの輸出企業には炭素排出量の詳細な報告義務と、排出量に応じた排出枠の購入が課されることとなります。欧州市場へのアクセスを継続するためには、生産工程における脱炭素化が不可避の要件となっています。
ベトナム政府もこれに呼応する形で、2025年6月から排出量取引制度(ETS)の第一段階を試験的に開始しており、2026年には排出規制の枠組みがより厳格化される見通しです。これを受け、国内の鉄鋼各社は電気炉(EAF)の導入や再生可能エネルギーの活用、水素還元製鉄技術の研究といったグリーン・スチール(Green Steel)の生産体制構築に向けた投資を大幅に加速させています。
環境対応に伴う設備投資コストの増加は避けられませんが、国際基準に準拠した持続可能な供給網の構築は、中長期的な競争力を維持するための必須条件となっています。産業構造の刷新に向けた大規模な技術転換の動きが、2026年の鉄鋼業界における最大の構造的変化となっています。

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