さらなる成長維持には外的リスク対応が課題か 環境変化とリスクに備え、確実に機会をつかむ|調達&ビジネスガイドブック2025

出所:JETRO の調査レポート「2024 年度 海外進出 日系企業実態調査」をもと週刊 Vetter 加工

ベトナム経済は2024年、政府目標を上回る成長を遂げました。しかし、米大統領選の結果による影響をはじめ、今後の成長を阻む可能性のあるさまざまな外的リスクも存在します。2025年の展望と在越日系企業が意識すべき課題について、日本貿易振興機構(JETRO)ハノイ事務所の萩原遼太朗氏に現状について解説していただきました。

2024年のベトナム経済をふり返って
2024年のベトナムの実質GDP成長率は、政府目標の6.5%〜7.0%を上回る7.09%でした。
購買担当者景気指数(PMI)も改善傾向を示し、拡大と縮小の分岐点である50ポイントを年間を通じてほぼ上回りました。内需においては小売やサービスが引き続き堅調に推移しています。
貿易については、輸出入とも前年の金額を上回り、2年ぶりに最高額を更新しました。主要輸出品目であるコンピュータ電子製品・同部品や機械設備・同部品などの増加が目立ちました。輸出額の約3割を占める米国向けの輸出が特に増加しました。輸出のための生産増加に伴い、部材の輸入も増加したものの、依然として全体の貿易黒字は維持されたままとなっています。
対内直接投資(FDI)については、認可件数・認可額ともに増加しました。品目では電子部品製造やサプライチェーン関連案件が多く、投資元としては特に中国や香港、韓国に本社を置く企業からの投資が顕著でした。日本企業は、内需をターゲットとした投資が増えています。国内市場展開を成功させるには、非日系企業との取引やネットワークの開拓、地場企業などパートナーとの提携などが重要となるでしょう。

読み込み中…
                                          出所:ベトナム統計総局をもとにJETRO作成

「トランプ2.0」のベトナムへの影響
ドナルド・トランプ氏が米大統領に再び就任したことで、米国への輸入品への高関税導入が予想されます。トランプ氏が対中関係で強硬策をとることにより、製造拠点の中国依存を避け、ベトナムへの生産移管を行う企業が増える恩恵を受ける可能性が期待されます。しかし、米国市場を失った中国製品のベトナム流入、サプライチェーン移管にともなう中国企業のベトナム進出により、ベトナム国内での市場競争が激化する可能性があります。
また、ベトナムも対米貿易黒字額が大きいため、関税政策の標的となることも懸念されます。
ですから、「米国ー中国ーベトナム」間の「三角関係」がどうなるか、という問題はベトナムで企業活動を行うに当たって向こう2〜4年間にわたる大きなキーワードになるのではと見ています。

好調な日系企業、事業拡大意欲も高い
JETROが行った「日系企業実態調査」によると、ベトナムに進出する日系企業の6割近くが今後1~2年で事業を拡大する意向を示しました。事業拡大意欲の回答率はASEAN諸国で最も高く、日系企業からのベトナムへの期待の大きさがうかがえます。業種別では、製造業の約半数、非製造業の6割強が拡大を計画。特に電機・電子機器や輸送機器分野で顕著な伸びを見せています。
事業拡大の背景には、ベトナム国内市場の成長と輸出需要の増加があります。企業は販売機能の拡大や高付加価値製品の多様化を進め、ビジネスチャンスを広げています。
また、日系企業が中国や日本から生産機能をベトナムに移管する動きも盛んになっています。直近5年間(2019~2024年)で「他国・地域からの生産機能の移管があった」と回答した企業は、件数・割合ともベトナムが最多でした。生産移管によるベトナムでの生産の拡大や強化は、裾野産業をはじめB to B分野の企業にとって大きな事業機会となることが期待できます。
しかし、製造業の大型案件の増加に伴い、前述したような中国企業との競争激化に加え、電力のひっ迫、人件費高騰や専門人材・ワーカーの採用難などといった人材確保の問題を招く恐れもあります。
ベトナム市場における事業の成功には、変化する事業環境にアンテナを張りながら、自社の事業規模・事業内容に適した、柔軟な備えや対応をすることが重要となるでしょう。

地方への事業展開も可能性高まる
上記のような経済成長、生産移管の動きと相まって、外資系企業の製造業進出が多くなかった地方省でも、道路インフラや工業団地などの開発が進みつつあります。2024年に延伸された高速道路についてみてみましょう。
南北高速道路の第1段階となる11プロジェクト(総延長約653km)が全て完成しました。
例えば5月には、ホーチミン市から約400km北方のカインホア省ニャチャン市までの高速道路が整備され、従来8時間かかっていた移動時間が5時間に短縮されました。さらに、6月には首都ハノイ市から約300km南方のハティン省までの区間も開通し、移動時間が従来の約6時間から4~5時間に短縮されています。これにより、南北高速道路の第1段階となる全11プロジェクト(総延長約653km)が完成しました。当初の計画より4年遅れましたが、交通インフラの強化が着実に進んでいます。
ただし、南北高速道路は2025年中の全線完成を目指しているものの、第2段階に当たる12プロジェクトは現在のところ進捗が遅れており、計画どおりに進むかは不透明な状況です。
また、地方省の港湾や空港の競争力が高くなく、国際輸送手段は限られます。さらに、各種行政手続きにあたっては、地方当局による運用や外資系企業への慣れなどの問題から、企業が集積するハノイ市やホーチミン市の周辺に比べ、困難に直面する可能性もあるでしょう。
このように物流面の課題をはじめ懸念やリスクは残りますが、高速道路や工業団地の整備により、地方省でも外資製造業を受け入れる環境が整いつつあり、早期参入でメリットを得ることも期待できます。人件費や土地使用料がハノイやホーチミン市近郊と比べて安価で、労働集約型産業の進出に適しています。たとえば、すでに中部のゲアン省などでは、工場を開く中国系製造業の動きが活発になっています。
また、2024年9月には中部初となる「イオンモール・フエ」がフエ市に開業しました。「イオンモール」はタインホア省でも新たな商業施設を開発中です。こうした流通・小売業の進出による生活環境の向上も、製造業の地方省進出の後押しにつながると期待しています。

出所:JETRO の調査レポート「2024 年度 海外進出
日系企業実態調査」をもと週刊 Vetter 加工

中央省庁再編とビジネスへの影響
ベトナム政府は、行政の効率化を目的として2025年春に中央省庁の大規模な再編を実施する予定です。2月18日時点の情報では、現在の18省8機関体制が見直され、財政省と計画投資省、情報通信省と科学技術省などの統合が進められる見込みです。

取材協力・記事監修
JETRO ハノイ事務所
萩原 遼太朗 氏

また、日系を含む外国企業の投資相談や各種許認可を行う他省庁との折衝窓口を担ってきた計画投資省の再編に伴い、今後の事業展開にどのような影響をもたらすかは注意が必要です。
労務案件を扱う労働傷病兵社会問題省の機能は、内務省、教育訓練省、保健省の3省へと分割される見通しです。駐在員に対する労働許可(ワークパーミット)の発給実務などにも影響が生じる可能性があります。
省庁の再編により、長期的には行政の簡素化や業務の効率向上が期待されますが、短期的には企業活動への影響が懸念されます。ベトナムの南北間で運用が違うといった弊害もこれまで示唆されていました。再編に伴い、許認可や投資審査の遅延が発生する可能性があり、行政手続きの停滞が企業の事業運営に影響を及ぼすおそれがあります。

2025年のベトナム経済見通し
ベトナム政府はGDP成長率を8%〜10%に引き上げる目標を掲げ、製造業のさらなる成長や内需拡大を促進する政策を推進しています。
日系企業が生産移管の進展などをはじめとする輸出の増加、消費市場の機会を捉えた国内ビジネスの拡大などを背景に事業拡大を見込むように、基本的には、内需と外需の両面でバランスよく経済成長を続けていくことが期待されるでしょう。
しかし、世界経済の不確実性や主要貿易相手国の需要動向などの外部要因に左右されると、ベトナム経済も減速する可能性があります。
ベトナムが2025年の成長目標を達成し、中期的な成長を加速させるには、まずは2025年前半、省庁再編をスムーズに終え、投資の呼び込みや国内インフラ開発を停滞させることなく、着実に前進させることが重要になるでしょう。

【2024年】ベトナム製造業の部品調達ならベトナム調達ガイド|ベトナム国内の優良企業を業種別で掲載中

 

 

    PAGE TOP
    preload imagepreload image