Contents
大富豪の旧邸宅を改良した美術館

「ホーチミン美術館」は、ベンタイン市場にほど近いホーチミン市1区に位置します。薄黄色の壮大な建物は、いかにもフランス植民地時代を彷彿させる重厚な建物で、所蔵品もさることながら建物自体も見応えがあります。

現在の美術館として利用される前は、中国人の資産家ホア氏の別荘で、1929年から1934年にかけてフランス人の建築家Rivera氏によって建てられたものです。大理石の床、湿気を嫌った風通しの良い部屋、中庭を一望する半屋外の通路などからも、当時の建築に対する美意識が窺えます。
所蔵作品だけではない。築約80年の建物自体も見る価値あり! 芸術鑑賞は人の心を豊かにします。サイゴンで過ごす休日にオススメ。


ちなみにベトナム戦争時に世界各国メデイアの滞在先だった「マジェスティックホテル」などもホア氏の所有物で、当時はサイゴンで最も裕福な方だったようです。

1987年ホーチミン市の人民委員会の決定によって建物が改装され、1991年に正式に美術館として開館しました。一個人の邸宅としてはむろん立派な建物ですが、美術館としては大きくはありません。元邸宅らしく狭い部屋に作家ごとに展示されていたりしますがコレクションの数自体は多い。


現代芸術作品も数多く展示されている。鑑賞者にはベトナム人学生が多い
建物は3棟に別れていて、エントランス前の一番大きな棟は、戦争時を描いた絵画が多く、二つ目の棟は現代芸術的な絵画、そして小さな棟は陶芸や古代の仏教美術品をメインに取り扱っています。

歴史を感じるらせん階段。建物も見どころ盛りだくさん


館内の作品には説明書きが少なく、制作時の作者の思いなどは窺いしれないことも多いのですが、そのぶん先入観に囚われることなく鑑賞できます。そういう意味では、絵画鑑賞力を磨くいい場だとポジティブに捉えたいものです。

そこで絵をどういうふうに見るか、正しい見方は? ということを気にされる方がいますが、基本的に正しい絵画鑑賞、間違った鑑賞などありません。人ぞれぞれが好きに見ればいい。妙に惹きつけられる。近くから、遠くから観たい。じっくり長く眺めてみたい。そんな感情が鑑賞を楽しむことに繋がります。
作者がどんな思いでこの絵を描いたのか? 絵を通して伝えたいメッセージは何か? そんな疑問に寄り添いながら鑑賞してみるものいいものです。

日本の美術館なんかでよく目にする「今世紀最大の名作」や「○○傑作選」といった商売の思惑で勝手につけられた誘い文句などありません。芸術は価値づけできないはずで、そういう他人の価値判断に左右されることなく楽しめる「ホーチミン美術館」。一度訪れてみてはいかかでしょうか?


ホーチミン美術館(Bảo tàng Mỹ thuật Thành phố Hồ Chí Minh)
住所 | 97A Phó Đức Chính, Phường Nguyễn Thái Bìn, Quận 1, Hồ Chí Minh |
電話番号 | +84-28-3829-4441 |
営業時間 | 8:00~17:00 |
定休日 | 月曜 |
料金 | 大人3万ドン・子ども(6〜16歳)1万5000ドン |