私も「移動する子ども」だった 川上郁雄

「オレの名前は Vu Ha Viet Nhat Hoai Nam パパとママと越南と日本とマイホーム 中学入学で名を翔と書く ベトナム人が嫌で為りきったジャパニーズ 日本名にこの顔 誰も分かりやしない 只 素性がばれるのが嫌で嫌でたまらない(…) 日本人ラッパー真似して 俺もなったラッパー ある日気づいた名前もラップも真似ばっか 逃げ回ってばかり ベトナムを隠し(…)オレが何人だろと一体構わない 流れてる血は日本より西のものだから だからオレはオレの事をオレの歌で証明(…)オレは向かい風を歩くベトナム少年 知らなかったぜマイライフ 始まりはボートピープル…」

素性を隠し続けたものの、自分のルーツを知った一人の人間としての誇りが感じられるこの歌を作ったのは、神戸で生まれ育ったベトナム人ラッパー、NAMさんだ。

子どものころから「ベトナム人難民」と特別視されるのが嫌だったという彼は中学になると日本名(通名)を使い始めた。

そんな彼を変えたのがラップとの出合い。無期停学を言い渡された高校一年のころのことだ。先輩に「何でもええから歌え、即興や。」といわれ、心の奥にくすぶっていた自分の素性を歌で告白した。

彼の勇気と葛藤が衝撃的な本書。ほかに9人の在日外国人が登場。それぞれどのような気持ちで幼少期を日本で過ごしたのか語られている。「移動する子ども」を持つ親御さんにぜひおすすめしたい一冊だ。

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