橋場弦、村田奈々子編『学問としてのオリンピック』(山川出版社、2016年)

岡崎匡史(おかざきまさふみ)。大学院で博士号取得後、放浪生活を経てシンクタンク勤務。社会になじめず再び学問の世界へ。著書に『日本占領と宗教改革』『文系 大学院生サバイバル』『国際開発と内発的発展』などがある。

2020年7月、東京オリンピックが開催される。
ところが、東京都知事は矢継ぎ早に交代。会場や競技場の準備、さらには7000億円と見積もっていた予算が、3兆円にまで膨らんだ。「オールジャパン体制」でオリンピック誘致をしていたころが懐かしい。
1964年の東京オリンピックは、日本の復興と高度経済成長期だった。当時の日本国民も、国家の威信を世界に示す意気込みがあり、日本の国際的地位を高めるという強い信念があった。
しかし、歴史に埋もれた「幻のオリンピック」がある。1940年の東京オリンピックだ。アジアで初めて開催されるはずだった。
大会の候補地を争った都市は、ローマやヘルシンキ。これらの国際都市を打ち破って東京が選ばれたが、1937年にシナ事変が勃発。陸軍からオリンピック反対の声があがり、首相の近衛文麿も戦争遂行に不必要な資材の使用を制限。ヨーロッパの情勢も不安定になり、1938年7月に日本政府は開催中止を決定した。
オリンピックは「平和の祭典」とも呼ばれるが、幻想を抱いてはいけない。古代ギリシアは、ポリスと呼ばれる都市国家から成り、その代表選手達が会場に集まり技を競った。開催期間だけは互いに手出しをせず、戦闘が一時的に収まるので「聖なる休戦」と呼ばれたのだ。
オリンピックの織りなす歴史は、感動の背後に政治と利害が深く関わっている。水面下で行われている政治駆け引きに注視すべきだ。

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