『赤ちゃん縁組みで虐待死をなくす 愛知方式がつないだ命』(矢満田篤二、萬屋育子著 光文社新書)

久田美菜(ひさだ・みな)。短大卒業後、モントリオールへ。貿易会社の受付・秘書、ライター業などに携わる。現地のボランティア活動で越僑の子どもを担当したことから、ベトナムに興味を持ち始める。多くの移民と働いた経験から人の移動に関心を持っている。好物はフーティウ。

カナダに住んでいたときのこと。銀行の窓口で「最近養子を迎えたのよ」と3歳ぐらいのアジア系の子どもがうつった写真を見せられたことがある。私の後ろは長蛇の列。正直、後ろで我慢強く待っている客の視線が気になって仕方なかったが、お構いなしとばかりに語り続ける窓口のブロンド女性。海外から養子を受け入れる土壌がない日本で生まれ育った私にとって、この体験はかなりのものとなり、ウン十年たった今でも、鮮明に脳裏に焼きついている。
日本では相変わらず虐待に絡んだ事件が日々報道されているが、最近よく耳にするのが「特別養子縁組」だ。1987年にはじまったこの縁組みは、中絶手術を回避するためにある医師が行った「赤ちゃんあっせん事件」が発端となっている。他の先進国と違い、国は養子縁組を一切援助していない。それがこの縁組みがなかなか広まらない要因の一つだが、そんな中、どこよりもいち早くこの活動を進めてきた行政機関がある。愛知県の児童相談所だ。後に「愛知方式」と評価されたこの活動の基礎を作ったのが、同相談所に勤務していた矢満田篤二氏だ。本書では、なぜ赤ちゃんのときから養子縁組をするべきかという矢満田氏の強い想いが語られるとともに、養子縁組に関わった人たちが赤裸々に描かれている。
4月4日は、養子(よーし)の日。いつの日か、血がつながっていない親子も普通になり、養子縁組から「特別~」といった言葉が消えたなら、もっと暮らしやすい世の中になるのではなかろうか。

 

 

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