いろは出版編『人類の悲しみと対峙する ダークツーリズム入門ガイド』(いろは出版、2016年)

人間の好奇心は尽きない。

不思議なもので、人間は幸福だけでは飽き足らず、悲惨な出来事をも知りたがる。見たくない、見たくない、と手で顔を覆いながら、こっそり手の隙間からのぞいてしまう。

「人類の悲しみと対峙すること」は強烈な体験となる。たとえば、ナチスドイツによる虐殺が行われた「アウシュビッツ収容所」、原子爆弾の悲惨さを伝える広島の「原爆ドーム」、ソ連で巨大な原発事故を起こした「チェルノブイリ」。人類の憎悪と傲慢(ごうまん)が織りなした遺産をめぐる旅を「ダークツーリズム」という。

「ダークツーリズム」の新しい候補地に、日本の「福島第一原子力発電所」が加わった。福島原発事故の悲劇から、6年目を迎えようとしている。時の流れとともに、福島の記憶は、消え去っていく。日本の各地では、原発再稼働の動きが活発になってきており、日本政府も原発を積極的に海外に売る「原子力外交」にいそしんでいる。「福島の復興」というと、ひとごとのように聞こえてしまう。実際、不自由のない暮らしをしている我々が、福島のためにできることは限られている。「福島のものを買う、福島に行く、福島で働く」ということくらいしかない。「ダークツーリズム」を通して、福島に出かけてみてはどうだろうか。原発を訪れる動機は「負の歴史」を学ぶこと。人間の愚かさとむなしさが襲いかかるかもしれないが、「負の歴史から教訓」を学ぶことは大きいはずだ。

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