『ジャーナリスト 後藤健二 命のメッセージ』 栗本一紀 法政大学出版局

彼の訃報が流れたとき、日本は戦争を始めるかもしれないと緊迫した。憲法解釈の議論が紛糾した直後で、首相がイスラエルを訪問し、外交に変化がみられたのもある。同時に、もしそうなれば、戦火の人々を取材しつづけて戦争の悲惨さを伝えた後藤さんの意に沿わない結果になる、心底悔しいだろう、とも考えた。平和を願うジャーナリストの死と、国が戦争をはじめるきっかけにもなる国民の死、どちらも同じ後藤さんという一人の死なのに解釈によって正反対のことが起きかねない。それも当事者の意思とは無関係に。

せめて、本人の思いを伝えられないか。きっとこの本の著者・栗本氏も同じことを思ったのだろう。パリ在住で、後藤さんの親友、同じフリーの映像ジャーナリストだそうだ。この本はジャーナリスト・後藤健二の姿を伝えてくれる。そしてジャーナリスト・後藤健二はなぜこのような行動をとったか、ジャーナリスト・後藤健二は自分の死や、日本の対応についてどう考えるだろう、と想いをはせる。

しかし、日本のジャーナリズムはどのように後藤さんのことを報道しただろう。日本人・後藤健二としてとらえ、なぜあのような危険な地に行ったのか、国民を「守る」ために国はどうすべきか、に終始していなかったか。それは戦争をしたら日本の批判もしかねなかった後藤さんと同じジャーナリストの仕事といえるのか。日本とジャーナリズムについても考えさせられる書である。

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