『中年クライシス』(河合隼雄、朝日文庫)

お正月。テレビをつけると、今年、50歳になる三浦知良選手が現役続行をするというニュースが流れていた。「中年の星」ともいえる三浦選手だが、ブラウン管ごしに見る三浦選手の動きは軽快で、親子ほど年の離れたほかの選手と何らかわりはない。中年をとっくに越えた従兄弟と「カズはすごい! どこまで行けるか」と話していると、「カズは別格。面白い本があるから、読んでみて」と差し出されたのがこの本だ。

著者は、いわずとしれた心理学者の故・河合隼雄氏。氏は、自分のもとに相談にくる中年に着目。安定した職業、家庭、社会的地位を築いて一見何の問題もないようにみえるいる彼らだが、実はその安定こそが重大なクライシスであり、また世の人々はそれをどう解決していったかということを、1章ごとに、ひとつの文学作品を取り上げて論じている。取り上げられた12の文学作品は、夏目漱石の『道草』、志賀直哉の『転生』、円地文子の『妖』などさまざまだ。氏によれば、中年とは、安定と不安定という強烈な二律背反に支えられている「魅力に満ちた時期」。その時期にさしかかろうとしている人、真っ只中にいる人はもちろん、「自己実現」、「片付かない人生」、「夫婦の行きちがい」、「死の体験」、「たましいの掃除」ーこんなキーワードが頭のアンテナにひっかかった人にもぜひおすすめしたい一冊だ。

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