出版社布施祐仁『経済的徴兵制』(集英社新書、2015年)

日本の若者は「徴兵制」によって戦地に駆り出されるのだろうか。

「徴兵制」は、荒唐無稽な話ではない。日本の歴史をさかのぼると、明治22年に「大日本帝国憲法」が公布され、「兵役の義務」(第20条)が国民に課された。

日清・日露戦争の勝利、アジア太平洋戦争の敗北を体験した日本は、戦後71年間、大きな戦争に巻き込まれることなくアメリカの「核の傘」のもとで平和を保ってきた。しかし、2015年に「集団的自衛権」の行使が容認されたことで、「徴兵制」の議論が沸騰した。

日本学生支援機構から奨学金を借りている学生の割合は約3人に1人。経済的な格差を利用し、貧困層に金銭的・職業支援などを実施することで、軍隊の要員確保が水面下で行われている。この動きを「経済的徴兵制」という。

「経済的徴兵制」は社会的弱者へのしわ寄せか、それともチャンスとみるべきか。新たな人材を発掘し、組織を活性化させ、なおかつ本人にとっても新たな道が開けるかもしれない。

しかし、人生の行き場がなく、仕方なく志願する若者もでるだろう。「国防」という責任を、特定世代の一定層にだけ押しつけるのか。

世代間のギャップを埋めるために私が提案したいのは、老年層への「徴兵制」だ。定年退職した方々は、2年間ほど社会奉仕をしてもらいたい。徴兵されない安全な立場にいる人間が「愛国心」や「徴兵制」を煽ることは危険だ。当事者にならないと、人は真剣に考えることをしない。

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