【熱狂半島】Linh Dung氏/コンカフェ創業者、ベトナム国内外で52店舗まで展開した秘訣

当初はビジネスに関心はなく、好きなデザイン表現の場として個性的なカフェを起業。それが数年間で支店が増え続け、現在は52店舗。創業者の生い立ちやアイデアの源泉など、気になるところを訊いてみました。

両親は子どもの自主性を尊重する教育方針

ベッター編集部
『コンカフェ』の渋いモスグリーンはズンさんが子どものころによく見ていた兵隊さんの軍服の色だったんですね。ところで幼少時代はどんな子どもだったのですか?
ズンさん
10人兄弟の末っ子ですが、控え目でおとなしい性格でした。今はオープンな性格に変わりましたが……。
ベッター編集部
兄弟が多く、にぎやかな家庭だったと思われるのですが、どんな風に育てられたのですか?
ズンさん
ベトナムでは子どもの時間を親がしっかり管理するのが一般的です。帰宅時間や勉強時間も親が決める傾向が強いです。しかし私の両親は自由に過ごさせてくれました。
ベッター編集部
子どもの自主性を尊重してくれたということですか?
ズンさん
父は家の4分の1ほどの面積を使って子どもたちが自由に過ごす空間を作ってくれました。音楽を練習したり、絵を描いたり、アート活動ができる部屋です。芸術や精神活動ができるようにと父の気遣いだったと思います。

心地よさを生むコンカフェの「レトロ」デザイン。

ベッター編集部
ご両親は何をされている方だったんですか?
ズンさん
父は楽器店を経営し、母はカフェをやっていました。
ベッター編集部
カフェは今とそのままつながっていますね。楽器も文化や芸術とつながりがあります。幼少時代の環境が現在の『コンカフェ』の運営でも生かされているのですね?
ズンさん
どうなんでしょう。少しはあるのかな? ただ子どものころは、母親のカフェにお客さんがたくさん入っているのを見ても大変だなとしか思わなかったです(笑)。それもあって経営に興味がありませんでした。まさか将来カフェを創業するなんで思ってもいませんでしたね。
ベッター編集部
でも身近なところに商売を見る機会はあったんですね。
ズンさん
これは両親の商売とは無関係ですが、小学生のころ、近所で音楽イベントがあるときに自分で果物を売っていました。今思えば、このときに商売の面白さを感じていたのかもしれません。
ベッター編集部
では当時、将来は何になろうと思っていたのですか?
ズンさん
音楽教育大学や国立音楽院で学びました。週に三回はいくつかのバンドで演奏しました。子どものころは近所の映画館によく足を運びました。将来はコレになるという具体的なものはなかったかも知れません。でも芸術や創作が好きだったので、漠然とですが、それに関連する仕事に就きたかったですね。
ベッター編集部
音楽は芸術。楽器店経営のお父さんの影響も大きかったとか?
ズンさん
どうかなぁ?父の影響というのであれば楽器よりもリサイクル精神ですね。父は修繕が得意でしたし、ちょっと手を加えて新たな価値を生み出していました。『コンカフェ』で修繕した古い椅子やテーブルを再利用していることを思えば、影響を受けているのかもしれませんね。
ベッター編集部
過度に管理せず自由な環境のもとで子どもの自主性を育む。ご両親の教育方針は素晴らしいですね。
ズンさん
はい。それに関しては本当に両親には感謝しています。

52店舗全部が子どものようなものです

ベッター編集部
話を『コンカフェ』に戻しますが、現在はズンさんご自身はどんな業務をされているのでしょうか?
ズンさん
気付いたことはなんでも(笑)。商品開発など新メニューはすべて自分でチェックしています。新店舗オープン準備とかも。ダナン出店のときは1カ月間ダナンに滞在しました。ホーチミンの開店時は私が行くときもあるし、デザインチームに任せる場合もあります。
ベッター編集部
現在、特に力を入れていることとかありますか?
ズンさん
最近は食事メニューの充実ですね。ケーキメニューとか。地域ごとに異なる新鮮なフルーツの仕入れにも気を使っています。
ベッター編集部
さまざまな場所での開店に携わってきたと思われるのですが、特に思入れが強いお店はありますか?
ズンさん
52店舗すべてが自分の子どものようなものなので、特にお気に入りという店はないです。その日の気分でお気に入りの店舗も変わります。お客さんのカフェ選びの感覚と似ているかも……。
ベッター編集部
ではよく立ち寄る『コンカフェ』はありますか?
ズンさん
94 Đường Láng (Quận Đống Đa)にはよく行きますね。ここは『コンカフェ』にしては大型店ですが、水~日曜はライブをやることもありますから、それを観に行きます。
ベッター編集部
『ベッター』編集部のお気に入りの店は、ハノイだとQuán Sứ店(68 Quán Sứ, Quận Hoàn Kiếm)、ホーチミンでしたらYersin店(93 Yersin, Quận 1)ですね。
ズンさん
そんなふうに言ってもらえるとうれしい。生活の一部でカフェを活用していただきたいですね。

ハノイの『Quán Sứ店』(68 Quán Sứ, Quận Hoàn Kiếm)『コンカフェ』の中では比較的大型店で2階の広めのテラス席も居心地よし。

ベッター編集部
ズンさんのオススメするメニューはありますか?
ズンさん
全部(笑)。基本メニューは全店舗同じですが、一部だけオリジナルがあります。

コンカフェで人気の『ヨーグルトコーヒー』(Sữa Chua Cà Phê)

今週末はコンカフェでゆっくり読書でもして過ごしたい…。

ズンさん
メニューは同じレシピで、すべて手作りです。日によって多少は味に変化があるかもしれません。そこは、人間がやることなのでやむを得ないと思っています。スタッフがうれしい気分の日、少し浮かない日などによって変化が生じることがまれにあるかもしれませんが、それも含めて楽しんでいただければうれしいです。
ベッター編集部
人間の曖昧さに対する愛おしさでしょうか、昨今のAI(人工知能)と人間の関係性にも通じるところがある気がします。ところで韓国には出店したそうですが、日本進出は考えていないのですか?
ズンさん
機会があれば考えたいですが、今のところはまだないです。でも『コンカフェ』グッズが買えるショップは東京の目黒にあります。グッズとはいえ、品質チェックが厳しい日本で販売できたことは誇らしいことです。

いろんな角度から物事を考えてみては……

ベッター編集部
日本や日本人に関してはどのような印象を持ってますか?
ズンさん
日本の料理や建築が好きですし、謙虚さと力強さをあわせ持つ日本人の性格が大好きです。どちらかというとおとなしくて静かな印象ですが、私の性格も日本人と似ている気がします。日本人は目標を達成しても、さらに上を目指して頑張るところがあります。『コンカフェ』のデザインは私の性格や思いが表現されている場所ですが、レイアウトやコンセプトなどに日本の文化の影響を受けています。似た性格だと思っている日本人の方に気に入ってもらえるとうれしいです。
ベッター編集部
では最後にカフェを成功に導いた創業者として、今後何かに挑戦したいと思っている人に対するメッセージをお願いします。
ズンさん
大切なのは自分でやってみるということ。勉強を繰り返すことも新しいアイデアを生み出す要因になると思います。現在のデザインチームからも「どうやってアイデアが浮かぶのか?」と質問を受けるのですが、大切なのは創造的思考を心掛けること。例えば、コップを見て飲む器以外の使い方はないかと考えてみるとか、一方からだけの見方ではなく、いろんな角度から考えるようにするといいと思います。
ベッター編集部
ズンさん、今回は取材を受けていただきどうもありがとうございました!